世界初となるプロジェクトも―海外テーマパーク&アトラクションの最新事例

エンターテイメント |

毎年さまざまな施設やアトラクションが誕生し、魅力的なプロジェクトの発表が続くテーマパーク業界。近年のトレンドである「体験型」「没入型」から、ファン待望の設置計画、さらには新機軸のアトラクションまで、本レポートでは、今海外で話題の最新事例を紹介します。

※このレポートは2024年11月に執筆されたものです。
※レポート内のリンクは執筆時に確認した外部Webサイトのリンク、画像はイメージ画像になります。

動画配信大手がテーマパーク業界に本格参入

ネットフリックス・ハウス / アメリカ

お気に入り作品の世界を「リアルライフ」の中で

米動画配信大手のネットフリックスは、体験型アミューズメント施設「ネットフリックス・ハウス」を2025年にオープン予定。人気シリーズや映画の世界を「リアルライフ」の中で楽しめる場所となると予告しており、ファン向けサイトでの発表によれば、定期的に更新されるさまざまな没入体験、特別なグッズ、オリジナルのフードやドリンクが見どころとなるようです。

米国の巨大ショッピングモール、ガレリア・ダラス(テキサス州ダラス)とキング・オブ・プルシアモール(ペンシルバニア州キングオブプルシア)の二か所に設置されることが決まっています。同社はこれまでも期間限定の体験施設やショップを各都市で展開し、好評を博しています。今回の施設の詳細についてはまだ明かされていませんが、それらを拡大・進化させたものになると考えられています。常設の施設を構えるのは、ネットフリックスとしても初めての挑戦となります。

参加者として楽しむエンターテイメント

ネットフリックスは、同社の配信プラットフォームや作品のファンたちが、視聴者としてではなく参加者としてエンターテイメントを楽しめることを重視しているといいます。そのための最も没入的な方法として力を入れるのが「体験型」です。ここでは、「ネットフリックス・ハウス」のベースとなると思われる既存の体験施設やショップの例を見てみましょう。

2024年10月からニューヨークで提供中の「イカゲーム・ザ・エクスペリエンス」は、韓国発の人気サスペンス『イカゲーム』をテーマにした没入体験施設。同作に登場する「ガラスブリッジ・チャレンジ」をはじめとして、作品世界を着想源としたスリリングな5つのゲームに挑戦できます。最大24人のグループに分かれてポイントを競い合い、得点で勝敗が決まる仕組みです。韓国風ナイトマーケットでの飲食やオリジナルグッズの購入、フォトブースでの撮影も楽しめます。チケットは一般29ドルから。VIPラウンジへのアクセス権や限定マスクなどがついた45ドルのVIPパッケージも用意しています。

米国やブラジルに設置された「ストレンジャ―・シングス・ザ・オフィシャルストア」では、SFホラー『ストレンジャー・シングス』の世界観を再現したセットの中で臨場感あるショッピング体験ができます。また、マレーシア・クアラルンプールのホテルでは、ヒューマンドラマ『ブリジャートン家』をテーマにした公式アフタヌーンティー、「ブリジャートン家のお茶会」を展開しています。

動画配信サービスの枠を超えたブランド構築の試み

これらの体験施設やショップはいずれも期間限定。各地で提供しているとはいえ、いつまでも楽しめるわけではありません。常設施設としてオープン予定の「ネットフリックス・ハウス」は文字どおり、そこに行けばお気に入り作品の世界に没入できる「家」のようなものになるでしょう。

ネットフリックスによれば、今回の施設は同社のサービスの「次世代」を象徴するもの。動画配信サービス業界の競争が激化する中、リアル空間への本格参入は、加入者増を目指すだけではない、愛されるエンターテイメントブランドになるための試みであると目されています。

動画配信サービスの大手企業がリアルの場に進出。年中訪れることのできる常設の体験施設はファンとのつながりを強化し、配信作品の魅力をPRするうえで力を発揮することになるでしょう。

● Netflix House / アメリカ(テキサス州およびペンシルべニア州)/ 2024年6月発表、2025年オープン予定 / 各面積約9,290㎡

ファン待望のテーマパークが中東に

ドラゴンボール・テーマパーク / サウジアラビア

50万㎡超の敷地に30以上のアトラクション

東映アニメーションは2024年3月、世界初となる『ドラゴンボール』のテーマパークをサウジアラビアに建設すると発表しました。オープン時期は未定ですが、東京ドーム約10個分(500,000平方メートル超)という広大な敷地の中で、7つのテーマ別エリアと30以上のアトラクションを展開。ホテルやレストランも完備し、一日中ドラゴンボールの世界に浸れる空間になるといいます。

「カメハウス」「カプセルコーポレーション」「ビルスの星」といったアイコニックな建物の再現はもちろん、ランドマークとなる全高70mの「神龍」の中を通り抜ける大型ジェットコースターなど、わくわくさせてくれる要素が満載です。

背景にはエンタメ都市の建設計画

サウジアラビアでは現在、このドラゴンボール・テーマパークを構成要素の一つとした大型都市計画「キディヤ・シティ」プロジェクトが進行中。首都リアド近郊の砂漠を一大エンターテイメント都市に変えようとするもので、今回の施設のほかにも、サウジアラビア初のシックス・フラッグス(北米の遊園地ブランド)「シックス・フラッグス・キディヤシティ」と地域最大級のウォーターテーマパーク「アクアラビア」が誕生する予定です。大型スタジアムや芸術文化施設、居住区域も整備する計画で、およそ60万人の居住者と年間数百万人の観光客を見込んでいます。

キディヤ・シティのコンセプトは「プレイ・ライフ」。「遊びの力を使い、持続可能なデスティネーション・シティを通じて社会を発展させ、世代を超えて人々の生活を向上させる」こと、「全てのステークホルダーが繁栄できるよう、協調しながら人々と環境を大切にするインクルーシブな都市」になることを約束しています。サウジアラビア政府が掲げる「サウジビジョン2030」では、石油依存からの脱却と、教育、観光、エンターテイメントなどの多様な産業の推進に力を入れています。キディヤ・シティもまた、同じビジョンのもとで計画の実現を目指しています。

日本が誇るアニメーション作品の力を活かした国際協同

ドラゴンボール・テーマパークは、この都市計画の実施主体であるキディヤ・インベストメント・カンパニー(サウジアラビアの政府系投資会社)と東映アニメーションの戦略的パートナーシップによるもの。東映アニメーションは近年、現地アニメーション制作会社との共同制作や人材育成への協力を通してサウジアラビアとのつながりを深めてきました。

サウジアラビアは中東で最もアニメ好きが多い国とされています。国民の8割にアニメの視聴経験があり、そのうち4割以上が「ドラゴンボール」を見たことがあるそう。同国におけるアニメーション文化の開拓に協力してきた東映アニメーションにとって、このテーマパーク事業は、ドラゴンボールというIPのさらなる価値向上、そして未来のエンターテイメント都市のための大きな礎となるでしょう。

日本を代表するIPの国際展開プロジェクト。テーマパーク事業を通した都市計画への参画は、アニメーション制作会社の取り組みとしても注目に値します。現地ファンの期待も大きいのではないでしょうか。

Dragon Ball Theme Park / サウジアラビア(リアド近郊)/ 2024年3月発表、オープン時期未定 / 面積約500,000㎡

大型エンターテイメントリゾートがおくる唯一無二の美食体験

イートレナリン / ドイツ

高級料理のフルコース×ライドアトラクション

イートレナリン」は、エキサイティングな美食体験で話題のダイニングアトラクションです。特別に開発された快適なダークライド(屋内アトラクションで使われる乗り物)に乗って高級料理のフルコースを堪能するというもので、2022年11月に誕生しました。施設のあるヨーロッパ・パーク・リゾートは、ドイツ最大級のレジャーランド「ヨーロッパ・パーク」やウォーターパークの「ルランティカ」に加えて、いくつものテーマホテルとレストラン、コンベンションセンターなどを擁する大型エンターテイメントリゾート。

この新たなダイニング体験は業界評価も高く、THEAアワード(Experiential Dining Attraction部門)やパーク・ワールド・エクセレンス・アワード (Best Product Innovation部門)をはじめ、多数の受賞歴があります。

ライドに乗って流れる美食の旅

まずは映像をご覧ください。体験は「ラウンジ」でのアペリティフから始まります。その後は自席に乗り込んで「オーシャン」「ディスカバリー」「ウマミ」などのテーマ別に設計された各室をめぐり、それぞれのテーマに沿った一皿を味わいます。映像や照明、音響を駆使してつくり込まれた空間が料理を引き立て、ゲストの五感を刺激します。

例えば、海中のような内装の「オーシャン」では、海の生物のアーティスティックな映像とともにシーフード料理が供されます。和食と日本酒のペアリングが登場する「ウマミ」は、料亭のカウンターを思わせるアジアンテイストの空間。最後に設けられた「バー」は、食後の余韻に浸りながら別料金のカクテルやお土産選びを楽しむためのエリアです。体験の流れはこちらから、料理の内容はこちらから確認できます。

基本料金は一人255ユーロ(2024年11月時点)、全8皿の料理とペアリングドリンク、駐車場代が含まれます。より豪華な「特別ディナー」「シャンパンディナー」「ソムリエディナー」のほか、カクテル中心の「レイトナイト」プランを選ぶことも可能です。ディナータイムのみの営業となっており、一晩あたり12枠の事前予約制です。各回の定員は16名で、各グループは20分おきに出発します。体験時間は約2時間。車いすユーザーにも対応しています。

アトラクションのプロならではの体験の創造

このダイニング体験の肝となるのは、さまざまな方向に向きを変えながら各室を移動する、テーブル付きの「フローティング・チェア」。ヨーロッパ・パークの創業者で現在は同パークを含む世界各地のアトラクションの設計・製造を手がけるマック・ライド社が独自開発したもので、美食の場にふさわしい滑らかな乗り心地を追及しています。

直接的な着想源もヨーロッパ・パークにあります。同パーク内のアトラクション「ヴォレタリウム」(ヨーロッパ中を旅するというコンセプトのフライング・シアター)を訪問した関係者らが、「このような旅をユニークな料理と組み合わせて、五感に訴えさまざまな感情を呼び覚ますような総合的体験をつくるのはどうか」と考えたことから、世界で最もエキサイティングな美食体験を開発するというビジョンが生まれました。

関係者によれば今回の施設は、ヨーロッパ・パーク・リゾートの「ありとあらゆる強みを結集させた感覚的冒険」。かなり強気の価格設定ですが、予約枠が開放される度に即完売となるほどの人気ぶりで、「ほとんどの人は、体験する前は高いと言い、体験した後は安すぎると言う」そうです。

テーマパークという非日常の空間ではレストランについても特別な体験が求められるようです。ライド開発の技術は新たな飲食体験の開発とも好相性。今後も各地で魅力的なダイニングアトラクションが生み出されるかもしれません。

Eatrenalin / ドイツ(ルスト)/ 2022年11月オープン / レストラン面積1,600㎡、建築容積約14,350㎡

Researcherʼs Comment

今回のレポートでは、話題性と新規性に着目しながら、世界の最新テーマパークおよびアトラクションの事例をご紹介しました。まもなく誕生予定のもの、計画段階のもの、すでに成功をおさめているもの、現時点での状況はさまざまですが、各事例からはこの業界の近年のトレンドがうかがえます。

ネットフリックス・ハウスでは、ショッピングセンターというリアルライフの空間の中で配信作品の世界を展開します。人気作やキャラクターに依拠した屋内アミューズメント施設は無数にありますが、シーズンごとに内容が変わるバラエティ豊かな作品群をテーマにできるのは、動画配信サービスの強みといえそうです。ドラゴンボール・テーマパークは日本IPコンテンツの力を感じさせる超大型プロジェクト。誰もが知る作品の世界がテーマパークの形で再現されるというだけあって、ファンの期待は大きいはず。背景にある都市計画を含めて、続報が楽しみな事例です。イートレナリンは、老舗テーマパークの技術力と発想力から生まれた新機軸のレストラン=アトラクションです。数々のアトラクションを目当てに訪問している来場者にとって食事は二の次と思われるかもしれませんが、メインイベント並みにキュレーションされた食べ物や飲み物、没入感のあるレストランは、ここ数年間で急成長中のトレンドとされています。ヨーロッパ・パーク・リゾートのアプローチは、飲食サービスという点でもアトラクションという点でも、面白い体験をつくる方法として参考になるのではないでしょうか。

ファンのニーズや時流を読み、常に新たなエンターテイメントを追及するのがテーマパーク業界です。ここで取り上げた3つの事例は、その多種多様なプロジェクトの一端にすぎません。国内国外を問わず、パークやアトラクションの新規開設はコストと時間のかかる一大事業ですが、計画が軌道に乗り、実際の施設として日の目を見たとき、訪れた人々を大いに楽しませてくれるでしょう。(丹青研究所 国際文化観光研究室)


この記事を書いた人

丹青研究所

丹青研究所は、日本唯一の文化空間の専門シンクタンクです。文化財の保存・活用に関わるコンサルや設計のリーディングカンパニーであるとともに、近年は文化観光について国内外の情報収集、研究を推進しています。多様な視点から社会交流空間を読み解き、より多くの人々に愛され、求められる空間づくりのサポートをさせていただいております。 丹青研究所の紹介サイトはこちら

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