ホテルの客室稼働率(OCC)の計算方法・採算ラインの目安は?上げる方法も紹介

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ホテル経営を安定させるためには、ホテルの客室稼働率(OCC)をはじめとする指標を把握することが重要です。この記事では、ホテルの客室稼働率(OCC)の計算方法、採算ラインの目安などを解説します。さらに、ホテルの客室稼働率(OCC)を上げる方法や注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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ホテルの客室稼働率(OCC)とは?

はじめに、ホテルの客室稼働率(OCC)の概要や計算式について解説します。

ホテルの客室稼働率(OCC)は客室稼働を測る指標

客室稼働率は、ホテルの客室がどの程度稼働しているかを示す指標です。英語では「Occupancy rate」と呼ばれ、略して「OCC」と表記されることもあります。ホテル経営の安定には、客室の稼働状況を正確に把握することが重要です。客室稼働率が高いほど利用客が多く、低い場合は空室が多い状態であることがわかります。

ホテルの客室稼働率(OCC)の計算式

客室稼働率の計算式は以下のとおりです。

客室稼働率=稼働した客室数÷トータル客室数×100

例えば、トータル客室数が200室の場合に80室の利用があれば、ホテルの客室稼働率(OCC)は40%となります。ホテルの客室稼働率は、1日から年単位での計算が可能です。

ホテルの客室稼働率(OCC)と似た用語との違い

ホテルの客室稼働率と似た用語である「客室平均単価(ADR)」や「1室あたりの収益額(RevPAR)」の違いについて解説します。

客室平均単価(ADR)

客室平均単価は「ADR(Average Daily Rate)」とも呼ばれ、客室平均単価つまり実際に宿泊利用されている客室の平均額を指します。1日ごとに算出され、計算式は以下のようになります。

客室平均単価=宿泊による売上の合計金額÷販売された客室数

例えば、販売された客室数が200室、売上合計金額が200万円の場合は、客室平均単価は1万円です。

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1室あたりの収益額(RevPAR)

1室あたりの収益額は「RevPAR(Revenue Per Available Room)」とも呼ばれ、1室あたりの収益額を指します。計算式は以下のとおりです。

1室あたりの収益額(RevPAR)=客室平均単価(ADR)×客室稼働率(OCC)

客室平均単価(ADR)が1万円、客室稼働率(OCC)が40%だった場合を例に挙げてみましょう。1室あたりの収益額(RevPAR)は4,000円です。客室平均単価(ADR)は実際に利用された客室の平均単価であるのに対して、1室あたりの収益額(RevPAR)は「空き室も含む全ての客室数」で算出されています。

ホテルの客室稼働率(OCC)が重要な理由

ホテルの客室稼働率がホテル経営にとって重要である4つの理由を解説します。

運営効率の指標になるから

ホテルの客室稼働率は、運営の効率やサービス提供能力を評価するうえで重要な指標です。稼働率が高いほど、多くの客室が利用されていることを示します。これにより現状を正確に把握できるだけでなく、目標への進捗を確認し、意思決定の参考とすることができます。

収益性の向上につながるから

繁忙期と閑散期の稼働率を把握すれば、各シーズンに必要な人員配置の把握が可能になります。繁忙期と閑散期に合わせた客室稼働率の見込みを検討することで、最適な価格設定ができるようになるでしょう。

競争力強化につながるから

高い客室稼働率を維持できれば、ホテルとしてのポジションを確立し、競合との差別化が図れるでしょう。競合の価格を定期的にチェックして価格を調整すれば、競争力を維持できます。

財務健全性と投資判断に影響するから

ホテルの客室稼働率は、財務上の健全性を示すのにも重要な指標です。安定していれば、長期的な成長の可能性が高いと評価され、資金調達がスムーズになります。宿泊に特化したビジネスホテルにおいては特に重要とされています。

ホテルの客室稼働率(OCC)の平均

観光庁の発表によると、日本の宿泊施設における客室稼働率は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と拡大後の2021年では、大きな違いがあることがわかりました。それぞれの内容を詳しく解説します。

2019年のホテルの客室稼働率(OCC)の平均

新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の日本の宿泊施設における客室稼働率は、日本全国で62.7%でした。施設別の客室稼働率は、以下のとおりです。

  • シティホテル:79.5%
  • ビジネスホテル:75.8%
  • リゾートホテル:58.5%
  • 旅館:39.6%

参考:宿泊旅行統計調査(令和元年・年間値(確定値))|観光庁

2021年のホテルの客室稼働率(OCC)の平均

新型コロナウイルス感染拡大後の2021年の日本の宿泊施設における客室稼働率は、日本全国で34.3%でした。施設別の客室稼働率は、以下のとおりです。

  • ビジネスホテル:44.3%
  • シティホテル:33.6%
  • リゾートホテル:27.3%
  • 旅館:22.8%

参考:宿泊旅行統計調査(令和3年・年間値(確定値))|観光庁

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ホテルの客室稼働率(OCC)の採算ラインは?

ホテルの客室稼働率を向上させ、利益を増やしていくためにも、自社の採算ラインを知っておくことが重要です。コロナ禍が開けた2023年の日本の宿泊施設における客室稼働率は、日本全国で57.0%と回復傾向にありました。施設別では、以下のとおりとなっています。日本全体の数値や自社の施設タイプの客室稼働率を採算ラインの目安にするとよいでしょう。

  • ビジネスホテル:69.2%
  • シティホテル:68.8%
  • リゾートホテル:51.9%
  • 旅館:36.7%

参考:宿泊旅行統計調査(2023年・年間値(確定値))|観光庁

ホテルの種類による稼働率(OCC)の課題

ホテルの稼働率を上げるには、さまざまな課題があります。施設別の主な課題は以下のとおりです。

リゾートホテル

リゾートホテルは季節変動による需要の不安定さ、景気や観光需要の動向の影響、アクセスの制約、集客力の限界などの課題があります。サービス品質の維持・競合との差別化も重要な課題です。

シティホテル

シティホテルは、立地・シーズン・イベントなどによる需要の変動や平日と週末の差が激しいことが主な課題です。また、インバウンドが増加傾向にあるため、ビジネス客と観光客がターゲットとなっており、顧客のニーズも多様化しています。

ビジネスホテル

ビジネスホテルは、多くの競合が存在し、価格競争が激化していることが大きな課題です。また、人手不足により、サービス品質の維持が難しくなっています。

ホテルの客室稼働率(OCC)を上げる方法

ホテルの客室稼働率(OCC)を上げるには、以下のような方法があります。

競合との差別化

観光・宿泊需要のトレンドを取り入れて競合との差別化を図ることがポイントです。近年でいえば、サウナの流行を受けて、サウナを新設したりリニューアルしたりするホテルも増えています。特別な体験や思い出など、価格以外の面でホテルの魅力をアピールすることが重要です。

顧客満足度の向上とリピーターの獲得

新規顧客の獲得に加え、リピーターの獲得も重要です。ホテルの設備を充実させる、リノベーションする、料理や接客に注力するなど、自社の売りを強化し、顧客満足度を高める必要があります。

業務効率化

近年は人手不足に悩まされているホテルも増えています。スタッフの負担を減らすには、自動化などを進めて業務効率化を目指すことが有効です。クラウド顧客管理、AIチャットボット、スマートチェックインなどは、スタッフの負担が減らせる施策としておすすめです。

固定費削減

利益を生み出すためには、固定費の削減などの経費削減も必要です。アメニティは希望者のみに渡す、ITツールで自動化して人件費を減らすなどの工夫ができます。

需要予測と価格設定の最適化

過去のホテルの客室稼働率のデータを把握し、需要を正確に予測することも客室稼働率の向上につながります。繁忙期には価格を引き上げ、閑散期には価格を抑えるなどの調整が必要です。

OTA・SNS・公式サイトの活用

OTAは、ホテル予約サイトなどのオンライン上のみで取引を行う旅行会社です。広範囲のユーザーへのアプローチが可能になります。またSNSで認知度を高めるのも効果的です。公式サイトだけではなく、OTAやSNSを活用し、それぞれのメリットを最大限に活かしましょう。

パッケージプランの企画

近年は顧客ニーズの多様化で競合との差別化が難しくなっており、特定のターゲットを集客できるかどうかがカギとなっています。旅行のテーマや目的を明確にしたパッケージプラン、季節ごとの宿泊プラン、イベントを連携させたパッケージプランなどは、特定のターゲットを獲得できる施策として有効です。

ホテルの客室稼働率(OCC)改善に取り組む際の注意点

ホテルの客室稼働率を改善するには、1つの施策や短期間での取り組みで効果が出るとは限りません。長期間にわたった取り組みが必要です。近年のホテル予約はWeb経由が多いため、Webサイトも細部まで作り込んだり、魅力的な写真・動画を活用したりすることも必要になります。

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まとめ

ホテルの経営を安定させるには、客室稼働率を上げることが重要です。記事内で紹介した採算ラインの目安や客室稼働率を上げる方法を参考に、稼働率アップを目指してください。

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この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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