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Z世代が「リアル店舗」に求めていることは?インタビューから読み解くインサイト
ショップ |
オンラインショッピングが日常化し、デジタル上で完結する購買体験が当たり前になった今。リアル店舗は単なる購買の場を超え、ブランドの世界観を体感する場や、人とのつながりを生む場として新たな役割を担いつつあります。そんな中で、Z世代はどのような理由でリアル店舗に足を運び、どんな体験に価値を感じているのでしょうか。
今回はアパレル、インテリア、レストランなど、複数の専門店を訪れる3名のZ世代へのインタビューを通して、リアル店舗への本音とインサイトを探ります。
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目次
Case1. 「休日はリアル店舗めぐり。空間そのものを体験として楽しむ」(Aさん/28歳/女性/社会人10年目)
休日には街を歩きながら、気になる店舗をめぐるのが習慣だというAさん。アパレルや雑貨、書店、レストランなど、ジャンルを問わず足を運び、買い物目的ではなく「空間を含めた体験」を楽しむことが多いのだとか。店舗という“リアルな場”を、ひとつの文化体験として捉える彼女に、リアル店舗の魅力を聞いた。

—— 普段、リアル店舗に行くときはどんな目的が多いですか?
Aさん:何かを買いに行くというよりも、その空間に身を置くこと自体を楽しんでいます。大型書店なら本を買うよりも、棚を眺めたり、レイアウトや照明を見たりするのが目的です。アパレルも同じで、内装やディスプレイの変化を観察するのが好きですね。商業施設の中で目に留まるお店があれば、知らないブランドでも自然と入ってしまいます。そうした体験は、ギャラリーや美術館を訪れる感覚に近いと思います。
—— レストランなど、飲食店にも同じような視点がありますか?
Aさん:あります。料理やサービスももちろん大事ですが、空間の雰囲気を含めて“その店らしさ”を味わいたいです。お店の空気に合わせて服を選ぶこともあって、空間の世界観に自分を合わせるような楽しさがあります。
—— “世界観のある店舗”というのは、例えばどんな店舗でしょう?
Aさん:アパレルなどはシーズン毎にテーマやコンセプトを持って展示等を行っていますよね。同様にポップアップショップなんかも明確なコンセプトを持って空間を作っていることがわかります。ただ、そういった作られた世界観だけでなく、たとえば古い居酒屋のように、長い時間の中で積み重なった歴史や人の気配によってできあがった空気感にも惹かれます。“意図していない世界観”も魅力的だと思います。
—— 旅行の際にも、店舗をめぐることはありますか?
Aさん:それが目的で旅に出ることもあるぐらいです。つい先日も大阪で古民家をリノベーションしたインテリアショップを訪ねました。SNSで見て気になっていたお店ですが、何かを買うつもりではなく、本当にお店を見に行くことが目的でした。海外でも同じです。とくに、韓国では個性的で世界観のあるお店が多く、買い物よりも店舗の空間そのものを体感することが目的になっていて、何度か訪れています。
【Aさんの3つのポイント!】
・ギャラリー感覚でリアル店舗を楽しむ
・“世界観”は、意図的に作られたものだけでなく、歴史や人の気配にも感じる
・リアル店舗を訪れることが海外旅行の目的に
| Aさんから読み解けるインサイト |
| Aさんにとってリアル店舗は、購買の場ではなく世界観を体感する場。何かを買うためではなく、空間を味わうために訪れている。デザインやコンセプトの完成度だけでなく、時間の経過や人の営みが生み出す“偶然の空気感”こそが、彼女にとってリアル店舗を魅力的にしている。 |

Case2. 「散歩の延長にあるリアル店舗。立ち寄りが“記憶”になる」(Bさん/23歳/男性/社会人1年目)
Bさんは休日になると、特定の目的地を決めずに街を歩くことが多いという。銀座や渋谷といったメジャーエリアだけでなく、街ごと・駅ごとに個性を感じる東京では、どのエリアにも新しい発見がある。そんな散歩の途中でふと目に留まったお店に立ち寄ることが、彼にとってのリアル店舗体験だ。

—— 普段、リアル店舗に行くのはどんなときですか?
Bさん:どこかに買い物に行くというより、街を歩いているときに気になるお店を見つけて入ることが多いです。狙って行くというより、散歩の途中に自然と寄ってしまう感じです。だから、リアル店舗はネットショップとは違って、その日その瞬間の“出会い”みたいなものですね。
—— 思わず足を止めてしまうお店には、どんな共通点がありますか?
Bさん:あたたかみを感じるお店です。蛍光灯よりもオレンジライト、木目や暖色のある空間に惹かれます。古着屋やアンティークショップのような、ちょっと生活感のある雰囲気が好きなんです。最近だとアンティーク家具のお店にふらっと入って、商品よりもステンドグラスや小物など内装のほうに目がいきました。空間全体を見て、自分の感覚を磨いているような感覚があります。
—— 反対に、あまり立ち寄らないお店は?
Bさん:ラグジュアリーで緊張感のあるお店が苦手というわけではないんですが、休日にふらっと入る感じではないですね。視覚的にはカッコよくて憧れもありますが、そういうお店は目的があるときに行く場所。逆に生活感や少しの“ゆるさ”がある空間の方が、気持ちが落ち着きます。整いすぎているお店は、どこか緊張してしまうんです。
—— お店で何か買い物をすることもありますか?
Bさん:あります。といっても、必要なものを買うというより、“このお店に来た記念”として買う感覚。お土産に近いです。気に入ったお店では小物を買うことが多くて、美術館でポストカードを買うのと似ているかもしれません。あとで、買ったものを見ると、そのときの空間や雰囲気を思い出せるのがいいですね。
【Bさんの3つのポイント!】
・リアル店舗は目的地というよりも、散歩の延長にある“寄り道”
・見てカッコイイ空間と、自分が身を置きたくなる空間は別
・購入は“必要”ではなく“記憶”。お店との出会いを形に残す
| Bさんから読み解けるインサイト |
| Bさんにとってリアル店舗は、目的を持って訪れる場所ではなく、日常の中で偶然出会う余白の体験。デザインの洗練さよりも、あたたかみや生活感、少しのゆるさに心地よさを感じ、立ち寄った時間そのものが記憶になる。そこでの買い物は、モノではなく“空間との出会いを持ち帰る行為”であり、そのストーリーがリアル店舗を特別な存在にしている。 |
Case3. 「異世界に浸れる店舗空間が好き。説明やサービスがなくてもいいから、ひとりで没入したい」(Cさん/25歳/女性/社会人7年目)
AさんやBさんとは対照的に、Cさんは普段あまり積極的に出歩くタイプではない。リアル店舗が苦手なわけではなく、どちらかというと店舗スタッフとのコミュニケーションが得意ではないからだという。それでも“行きたいと思える空間”があり、そこにはCさんなりのリアル店舗への価値がはっきりと存在している。

—— 普段、足を運ぶことが多い店舗にはどんな特徴がありますか?
Cさん:キャラクターグッズのお店や、アニメ・Vtuberのポップアップに行くことが多いです。推しのキャラじゃなくても、その空間に入ると完全に別世界に来た感じがして楽しいんですよね。世界観が自分の趣味と違っていても、細かい装飾や演出を見ているだけで満足できます。
—— “異世界感”が好きなんですね。一方で、アパレルや飲食の世界観を打ち出した店舗はどうでしょう?
Cさん:そこはちょっと苦手です。アパレルやレストランの世界観も凝っているんですけど、どこかに“おしゃれじゃないと入れない”みたいな空気を感じてしまって。ブランドの歴史とか思いを押し出される感じも、自分には重く感じます。異世界に浸りたいだけなのに、変に背伸びしないといけない気がしてしまうというか…。
—— では、楽しく過ごせる店舗空間にはどんな共通点がありますか?
Cさん:一人で気軽に入れて、自分のペースで見て回れることが大事です。スタッフさんと話す必要がなくて、ひたすら空間に没入できる店はすごく居心地がいいです。買い物目的というより、異世界の空気にひたること自体が目的になります。
【Cさんの3つのポイント!】
・異世界に一人で浸れる店舗空間が心地いい
・推しでなくても、細部のつくり込みを観察するのが楽しい
・“思い”や“コンセプト”を強く押し出される空間は気後れしやすい
| Cさんから読み解けるインサイト |
| Cさんにとってリアル店舗は、接客付きの購買の場ではなく、ひとりで静かに没入できる“異世界の体験装置”。コンセプトや歴史の深読みよりも、細部の表現や演出そのものを味わいたい。リアル店舗の価値は、自分のペースで外の世界にトリップできることにある。 |
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まとめ:Z世代がリアル店舗に求めているのは、物を買うだけでは満たせない“自分に合った体験”
今回のインタビューで見えてきたのは、Z世代がリアル店舗に求めている価値が、商品そのものではなく「どんな気分になれるか」「どんな体験があるか」という“体感価値”に大きく寄っているという点だ。
リアル店舗は、ただの購買場所ではなく、自分の世界観や気分に合った体験を選び取るための場所へと変わりつつある。
まずAさんは、店舗空間そのものを楽しむタイプだ。アパレルからレストラン、古い居酒屋まで幅広く足を運び、意図的にデザインされた世界観だけでなく、時間の蓄積によって生まれる偶然の空気感にも惹かれるという。リアル店舗は“世界観を体験する場”であり、購買よりも空間そのものが目的になっているのが特徴的だった。
【Aさんが求める空間づくりのヒント】
・ギャラリーのように“空間を歩き回る楽しさ”がある設計
・意図的・偶発的のどちらでも成立する多様な世界観の表現
・店舗ごとの個性や“空気感”を感じられるディテールづくり
一方でBさんは、散歩感覚で街を歩きながら、ふと気になった店舗に立ち寄るというスタイル。温かみのある空間に惹かれ、購入するのも“記念”や“思い出”としての小物が多い。彼にとってリアル店舗は、目的地ではなく“寄り道”。日常の中の偶然が価値になっている。
【Bさんが求める空間づくりのヒント】
・街歩きの延長で入りやすい、温度感のある空間
・生活感や“小さなゆるさ”を許容するディスプレイ
・立ち寄った経験が“記憶”として残るようなストーリー設計
そしてCさんは、接客やコミュニケーションへの負担から、リアル店舗を積極的に利用するタイプではないものの、異世界に浸れる空間には惹かれるという。推しのキャラでなくても、その場の演出や細部のつくり込みに没入できる店舗は心地よい。一方、アパレルや飲食の“洒落感”には気後れしやすいという本音も見えた。
【Cさんが求める空間づくりのヒント】
・一人で没入できる、静かな鑑賞体験のある店舗設計
・細部のつくり込みが“世界観”として伝わる演出
・接客負荷を下げ、自分のペースで歩ける動線や情報設計
以上のように、同じZ世代でもリアル店舗への期待は大きく異なる。共通して言えるのは、商品を買うかどうかよりも、店舗で過ごす“感情”が重要な価値になっていること。リアル店舗の魅力は、オンラインには再現しづらい空気感、偶然の出会い、没入体験といった“場の力”にあり、その場が自分にフィットするかどうかが選択の基準になっている。

この記事を書いた人
株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。
この記事を書いた人
株式会社丹青社
