店舗のデザインや建材選びの判断に!店舗における空間データ分析の活用事例を紹介

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店舗における建材の選定やデザイン変更は、これまでデザイナーの経験や直感に頼る部分が大きい領域でした。この記事ではデザイン変更が顧客行動に与える影響を、客観的なデータによって測定し、デザインの投資対効果を数値で示した事例を紹介します。

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ベーカリーブランドが抱えていた店舗の課題

視覚的ノイズとなるショーケースのガラス反射

※イメージ画像

全国に展開するベーカリーブランド「ドンク」では、コロナ禍を経て、多くの店舗で商品をショーケースに入れた状態で販売するように設計を変更していました。

特に百貨店食品フロアに出店することになった「ドンク東京大丸店」は全て、対面式のガラスショーケースの店舗として設計されていました。

ガラスは透明素材として認知されていますが、その表面の僅かな反射率が空間の視覚的ノイズとなり、その視認性の低下が心理的なノイズになることがあります。

一般的なフロートガラスと低反射ガラスの比較・検証を実施

そこで、ショーケースの中にあっても商品が美味しそうに見えるように、低反射ガラスの採用が検討され、低反射ガラスの効果をデータで評価したいと考えていたAGC株式会社の協力のもと、通常ガラスと低反射ガラスを比較する実験を、店舗で実施することになりました。

店舗の空間データ分析を実施

データ分析の概要

店内天井部分に設置したカメラ1台を用いて調査を実施しました。データ収集期間中に、ショーケースのガラスを一般的なフロートガラスから低反射ガラスに交換しました。

空間データプラットフォーム「FAC+(ファクタス)」の技術を使い、人流解析(ピープルカウント)データを取得し、店舗の売上データと併せて分析を行いました。

設置期間

一般合わせガラス
2023年11月16日~11月29日※
※11/23(祝)は除く合計13日間を人流解析の対象とした

低反射ガラス クリアサイト®Ⅱ 合わせガラス仕様
2023年12月2日~15日※
※12/14は除く合計13日間を人流解析の対象とした

使用ガラス:AGC株式会社 建築用低反射ガラス クリアサイト®Ⅱ
https://www.asahiglassplaza.net/products/clearsight2
合わせガラス仕様

低反射ガラスに交換後の「ドンク東京大丸店」

データ分析の結果

データ分析の結果は以下の通りとなりました。

 データ分析の結果
・ショーケースを見る人が増えた(1日あたり58人)
・ショーケースを見る時間が増えた(1日あたり総和38分)
・じっくり見る人(10秒以上)が増えた
 売上データより
・購入者数が増えた(3.3%) 
・客単価が増えた(3.2%)
・売上が増えた(6.7%)

データが示した低反射ガラス効果

低反射ガラスを導入してから、一般的なフロートガラス時に比べて、顧客の滞留時間等が明確に増加し、売上が106.7%に向上するという結果となりました。

分析時の店舗前通行人数は平均で延べ約8,000人/日と多く、統計学検定法においても、この検証結果は偶然ではないと評価されるものでした。

反射を抑えるというこの建材の効果により、ショーケース内部への視覚的ノイズが減少し、お客様の購買行動に変化を与えたことがデータとして示されたといえるでしょう。この結果を受けて、ドンクでは他の店舗でも、ショーケースと、ガラス越しにパンを焼く様子が見えるスペースに、低反射ガラスを採用しました。

低反射ガラスが採用された「ミニワン アトレ亀戸店」

店舗の空間データを意思決定の判断材料に

この事例が示すように、店舗の空間データ分析は、建材やデザインの選択が顧客に与える影響を正確に把握するための強力なツールです。

空間データ分析では、他に属性データ(性別、年代)や、レジ前の滞留時間なども計測することができます。感覚ではなく、売上アップに直結する確かな判断材料として、デザインの意思決定プロセスにデータ分析を組み込むことが、これからの店舗づくりには必要ではないでしょうか。

この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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株式会社丹青社