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Z世代・ミレニアル世代は医療施設に何を求める?インタビューから見えた世代差と空間づくりのヒント
ウェルネス |
コロナ禍を経て、医療施設に求められる空間の役割は変わりつつあります。清潔で機能的であることは当然として、待合室での過ごしやすさ、安心感、そして患者本人だけでなく付き添いの家族まで含めた体験が、医療施設の印象を左右するようになりました。
では、Z世代とミレニアル世代は、医療施設の空間にどのような価値を求めているのでしょうか。今回はZ世代とミレニアル世代、それぞれ2名ずつ計4名にインタビューを実施。通院頻度や置かれた状況の違いも踏まえながら、医療施設に対する本音と、これからの空間づくりのヒントを探っていきます。
目次
Case1. 「落ち着きたいけれど長居はしたくない。実家感のある病院とスムーズな会計が理想」(Aさん/Z世代/男性)
Aさんは、肌が弱く皮膚科に定期的に通っているほか、風邪などの軽い症状でも医療機関をよく利用している。母親が医療従事者であることもあり、病院に対して強い抵抗感はない。一方で、地元のかかりつけと都心の大きな病院、それぞれの空間を経験したことで、自分がどんな医療空間に居心地のよさを感じるのかが見えてきたという。

—— 普段はどんな医療機関に通うことが多いですか。
Aさん:基本的には地元の行きつけの病院ですね。とはいえ何度か、都心の大きな病院に行ったこともあります。都心の病院はとても広くて、白で統一されたクリーンな印象でしたが、どこかオフィスみたいな緊張感があって、あまり落ち着けませんでした。そこで、自分は病院にそういう雰囲気は求めていないんだなと気づきました。
—— 逆に、地元の病院にはどんな居心地のよさがありますか。
Aさん:少し古い建物なんですが、どこか実家っぽい安心感があって、温度感というか、人の気配を感じられるのが好きです。ただ、コロナ禍以降は気になるポイントも増えました。建物そのものというより、スリッパが殺菌されているのか、換気はどうかといった細かい部分に目がいくようになりました。以前はそこまで気にしていなかったので、自分の基準が変わったと感じます。
—— あったらいいなと思う設備や配慮はありますか。
Aさん:個人的には、ウォーターサーバーや加湿器があるとありがたいです。季節を問わず乾燥は気になりますし、体調が良くない時はなおさら喉を潤したいので。ただ、ウォーターサーバーはサービスに近い領域だとも思うので、そこまで病院に求めるのは違うのかなという気持ちもあります。加湿や空気環境のケアがされていると分かるだけでも、安心感はだいぶ変わりますね。
—— 都心の大きな病院で、良いと感じた点はありましたか。
Aさん:会計がセルフレジだったのはすごくいいなと思いました。どんなに落ち着く空間でも、病院に長くいたいわけではないので、診察や治療が終わったらできるだけ早く帰りたいんです。診察待ちの時間も長く感じますが、会計待ちの方が、終わっているのに帰れないもどかしさがあって苦手です。セルフレジはそのストレスをかなり減らしてくれました。自分は病院に落ち着きを求めていますが、あくまで滞在時間は短くていい。そのバランスが大事だと感じています。
【Aさんの3つのポイント!】
・病院に求めるのは、新しさだけでなく実家のように落ち着ける空間
・コロナ禍以降、スリッパや換気など細部の清潔感が気になるようになった
・居心地は大事だが、長居したいわけではなく、セルフレジなどスムーズな退室も重視
| Aさんから読み解けるインサイト |
| Aさんにとって医療空間は、清潔であることは前提としつつも、どこか人の温度を感じられる落ち着いた場所であってほしい。一方で、滞在時間は最小限にしたいという本音もあり、安心して過ごせる空気感と、ストレスなく早く帰れる仕組みの両立が、これからの病院づくりに求められている。 |

Case2. 「地方都市で病院を選ぶからこそ、治療に加えてストレスを減らす空間かどうかを見ている」(Bさん/Z世代/女性)
Bさんは地方都市に暮らし、慢性的な喉や鼻炎、目の不調などを抱えている。近所の医療機関だけでは十分に改善しないと感じることも多く、症状に合わせてインターネットで病院を探し、車で30分以上かかる場所に通うことも珍しくないという。

—— 地方都市で病院を選ぶとき、どんなことを意識していますか。
Bさん:東京や大阪のような大都市と違って、そもそもの選択肢が多くないんです。自分の症状をちゃんと診てもらえそうな病院が、車で30分以上かかるのは当たり前。そのぶん一度行って合わなかったときの精神的・時間的コストが大きいので、病院選びにはどうしても慎重になります。結果的に、治療以外の部分にも要求が高くなっている気はします。
—— 病院を探すとき、どのように情報収集をしていますか。
Bさん:まずはネットで、自分の症状をきちんと診てくれそうかどうかを確認します。医師のプロフィールも見ますが、それに加えて病院の内観写真も必ずチェックします。ホームページに載っていなければ、検索して画像を探したり、地図アプリで雰囲気を見たりすることもあります。きれいかどうか、清潔感があるかだけでなく、置いてある家具や備品が新しいかどうかも気になります。
—— 求めているのは、どんな「新しさ」でしょうか。
Bさん:建物の築年数が新しいかどうかは、それほど気にしていません。どちらかというと、インテリアやレイアウトに気配りがあるかどうかですね。待合室の椅子が対面で並んでいて他の患者さんと真正面になる配置だったり、背もたれのないベンチのような椅子だけだったりすると、古さよりも「配慮が足りない」と感じてしまいます。
かといって、インテリアに力を入れていますというような、おしゃれさ全開の病院を求めているわけではありません。あくまで治療が起点で、その上でストレスを減らしてくれる空間かどうかを見ています。
—— 病院に対する感情や期待についてはどう考えていますか。
Bさん:子どもの頃から通院の頻度が高かったこともあり、病院は身体的にも、時間的にも、金銭的にもネガティブな場所というイメージが強いです。ポジティブな場所になりようがない、とさえ思っています。だからこそ、プラスの要素を足すというより、マイナスを減らしてくれる配慮があるといいなと感じます。
でも、その正解が何かは自分でもはっきり言えません。例えば、以前通った歯科で明るい雰囲気を出そうとアップテンポな音楽が流れていましたが、自分には合わなくて落ち着きませんでした。良かれと思っての工夫が、必ずしも全員にとってプラスになるとは限らないと感じました。
【Bさんの3つのポイント!】
・医療機関の内観写真までネットでチェックするのは当たり前になっている
・建物の新しさよりも、レイアウトや椅子などに配慮が感じられるかを重視
・病院は本質的にはネガティブな場所だからこそ、ストレスを少しでも減らしてほしいという期待がある
| Bさんから読み解けるインサイト |
| Bさんにとって医療空間は、完全にポジティブな場にはなりにくいからこそ、マイナスをどれだけ減らせるかが重要なテーマになっている。地方都市で選択肢が限られている中でも、オンラインで情報を集めながら、治療の質と空間の配慮をセットで見ている姿から、Z世代にとって医療機関の検索・比較が、他のサービスと同様の感覚で行われていることがうかがえる。 |
Case3. 「医療にお金をかけてほしいからこそ、空間には安心感と実用性を求める」(Cさん/ミレニアル世代/女性)
Cさんは、皮膚科や耳鼻科、歯科、美容医療など、さまざまな医療機関に通っている。これまで複数の会社で勤務し、健康診断を受けるクリニックもいくつも経験してきた。一般的な人よりも病院や治療に時間とお金をかけている自覚があるからこそ、医療機関に対する視点もシビアだ。

—— 病院やクリニックを選ぶとき、どのように情報を集めていますか。
Cさん:基本的にはウェブ検索ですね。ただ、他の方と違うかもしれないのは、内装はほとんど気にしないところです。むしろ、内装にお金をかけていると感じる病院は、それが料金に反映されていそうで少し構えてしまいます。特に歯科や美容医療は、ラグジュアリー感のある施設が多い印象があるので、よほど口コミが良くない限りは避けることが多いです。
—— 医療機関には、どのような投資をしてほしいと感じていますか。
Cさん:一番は医療そのものにお金やエネルギーを使ってほしいです。空間の豪華さや映え感にはあまり価値を感じません。それよりも、カウンセリングや説明が丁寧かどうか、治療方針に納得感があるかどうかを重視します。美容医療は特に、派手な空間よりも堅実そうなクリニックの方が安心できます。
—— とはいえ、待合室の居心地についてはどう感じていますか。
Cさん:好みはあります。待っている人との距離が近い空間は落ち着きませんし、広くてもただ四角い箱のように開けているだけだと、人の目線が気になってしまいます。柱やパーティションがあって視線が分散される方が安心です。咳をしている人と対面で座るような配置も、仕方ないとは思いつつ、できれば避けたいです。こうした感覚はもともとありましたが、コロナ禍以降さらに強くなったと感じます。
—— あったら嬉しいと感じる機能やスペースはありますか。
Cさん:コンセントが使える場所はかなりポイントが高いです。風邪をひいたときなどは、仕事の合間を縫って病院に行くことも多く、どうしてもメールを返信しないといけない場面もあります。スマホの充電が切れそうなときに充電できるだけでも、かなり安心感がありますね。欲を言えば、駅にあるような小さなワークスペースがあると理想的です。
美容医療以外は、体調が良くないタイミングで行くことが多く、その裏では仕事が残っていることも多いので、待ち時間をまったく仕事に使えないのはもったいないと感じることがあります。ただ、今の待合室でパソコンを開くのは、周囲の目が気になってやりづらいので。
—— 最近の医療空間の変化について、感じていることはありますか。
Cさん:ここ数年で、医療機関の空間は全体的によくなっていると感じます。今の会社で毎年行っている健康診断のクリニックは、清潔感があって照明も明るく、クリーム系の色味で統一されていて、待合室にも逃げ場がある配置になっています。着替えの部屋から各検査室への動線もスムーズで、設計にかなり工夫があると感じました。過去に通ったクリニックを思い返すと、ここまで配慮されているところはあまりなかったので、空間設計の水準は確実に上がっているのかなと思います。今後も病院を空間だけで選ぶことはないと思いますが、期待は高まっています。
【Cさんの3つのポイント!】
・医療機関には、空間よりも医療の質にお金とエネルギーをかけてほしいと感じている
・待合室には、距離感や視線に配慮されたレイアウトと、コンセントなどの実用性を求めている
・近年の医療空間にはポジティブな変化を感じており、今後への期待もある
| Cさんから読み解けるインサイト |
| Cさんにとって医療空間は、豪華さや非日常感よりも、信頼できる医療と安心して待てる環境が優先される。過度な装飾やラグジュアリー感はむしろ警戒の対象になり、視線や距離感への配慮、コンセントやワークスペースといった実用的な機能が価値を持つ。ミレニアル世代は、医療の質と生活者としてのリアルな事情を両立できる空間を求めていると言えそうだ。 |
Case4. 「子どもと親を支える立場から見える、病院の居心地と安心感」(Dさん/ミレニアル世代/男性)
Dさん自身は健康で、定期的な健康診断以外に病院を利用することはほとんどない。一方で、二人の子どもの通院に付き添う機会や、最近では両親の入院も経験し、家族のサポート役として病院を訪れることが増えている。患者本人とは違う視点から、医療空間の課題や可能性を感じている。

—— 家族の通院や入院に付き添う中で、どんなことを感じていますか。
Dさん:子どもが二人いるので、小児科や歯科などに付き添う機会はかなり多いです。その中で感じるのは、プレイルームとワークスペースの難しさですね。プレイルームのおもちゃは、コロナ禍以降どうしても感染のことが頭をよぎって、あまり触らせたくない気持ちがあります。一方で、自分は基本的に健康ですし、仕事もあるので、待ち時間の30分を何もしないまま過ごすのはもったいないと感じることも多いです。本当はパソコンを開いて作業したいのですが、普通の待合室だと遠慮してしまいます。
—— 音やプライバシーについてはいかがですか。
Dさん:防音に関しては、意外と配慮されていないところが多いと感じます。子どもの歯科などでは、診察室の泣き声がそのまま待合室に聞こえてくることがあり、子どもたちは余計に緊張します。大人でも、診察室の会話や音が丸聞こえなのはあまり心地よくありません。狭い病院であっても、防音や音の抜け方にもう少し配慮があるといいのにと思う場面は多いです。
—— ご両親の入院では、どのようなことが印象に残っていますか。
Dさん:最近、親が入院することになったのですが、最初に選んだ病院を本人が嫌がって転院しました。理由を聞いても具体的な言葉にはなっていなくて、何となく冷たい感じがする、暗い、居心地が悪い、といった感覚的なものだったようです。自分から見ると、最初の病院も特別悪い印象はなく、むしろ親世代からすると普通の病院に見えるのではと思っていました。でも、今の時代は高齢者であっても、病院の空間に居心地のよさを求めているのだと気づかされました。実際、転院先は明るくて開放感があり、親も納得して入院できていました。
—— 医療空間に今後期待したいことは何でしょうか。
Dさん:自分の通院だけを考えると、健康診断を受けて終わりなので、あまり多くは求めないかもしれません。ただ、家族の付き添いという視点で見ると、プレイルームのあり方や、付き添い家族のためのワークスペース、防音や音環境、高齢者が安心できる明るさや雰囲気など、考えるべきポイントはたくさんあると感じます。患者だけでなく、その周りにいる人も含めて、どう過ごすかを設計してもらえるとありがたいですね。
【Dさんの3つのポイント!】
・コロナ禍以降、プレイルームのおもちゃなどに触れさせにくくなっている
・防音や音の抜け方に配慮されていない病院が多く、子どもや大人の緊張につながっている
・高齢者であっても、病院の空間に明るさや居心地のよさを求めるようになっている
| Dさんから読み解けるインサイト |
| Dさんの視点からは、医療空間が「患者だけの場所」ではなく、子どもや保護者、高齢の親など、家族全体が関わる生活の一部として機能していることが見えてくる。プレイルーム、ワークスペース、防音、明るさといった要素は、診療そのものには直接関係しないようでいて、家族全員の安心感や信頼感に大きく影響している。ミレニアル世代の親世代は、自分自身と家族双方の視点から、医療空間の質を意識し始めていると言えそうだ。 |

まとめ:Z世代は「不安を和らげる配慮」、ミレニアル世代は「生活と両立できる安心感」を求めている
今回のインタビューから見えてきたのは、Z世代とミレニアル世代で、医療施設の空間に対する期待の重心が異なっているという点でした。
Z世代にとって医療施設は、できれば長く居たくない場所でありながら、緊張や不安をできるだけ抑えてほしい場所でもあります。
Aさんは「実家のような落ち着き」を感じられる病院に安心感を覚える一方、セルフレジなどによるスムーズな会計を高く評価していました。またBさんは、病院選びの段階から内観写真を確認し、待合室のレイアウトや椅子の配置といった細部にまで目を向けています。
共通しているのは、医療施設をポジティブな体験の場に変えたいわけではなく、不安やストレスをこれ以上増やさないでほしいという感覚です。清潔さや新しさそのものよりも、空気感、距離感、視線への配慮といった、感情に直接作用する要素が重視されていました。
【Z世代が求める空間づくりのヒント】
・白くて新しいだけではない、緊張を和らげる温度感のある空間
・スリッパや換気など、触れるものや空気への分かりやすい清潔配慮
・待ち時間や会計時間のストレスを減らす、スムーズな導線と仕組み
一方でミレニアル世代は、医療施設を生活の延長線上で捉えている傾向が見えてきました。
Cさんは、ラグジュアリーな内装よりも医療の質や説明の丁寧さを重視しつつ、待合室では視線や距離感、コンセントといった実用性を求めています。Dさんは、子どもや親の付き添いという立場から、プレイルームの在り方や防音、高齢者にとっての居心地の良さに目を向けていました。
ミレニアル世代にとって医療施設は、自分だけでなく家族や仕事とも並行して関わる場所です。そのため、安心して待てること、必要であれば仕事や用事に対応できることなど、現実的な生活との両立が重要な価値になっています。
【ミレニアル世代が求める空間づくりのヒント】
・過度な装飾よりも、信頼感や堅実さが伝わる空間設計
・視線や音への配慮が行き届いた、安心して待てる待合室
・付き添い家族や働く人にも配慮した、ワークスペースや機能性
Z世代は「不安や緊張をいかに減らせるか」を、ミレニアル世代は「医療と生活をどう両立できるか」を、それぞれ医療施設の空間に求めていることがわかりました。重要なのは、世代ごとに空間を分けることではなく、落ち着ける空気感と、現実的な使いやすさをどう共存させるかという視点です。
安心感を与えつつ、無理なく過ごせる。患者本人だけでなく、その周囲の人の時間や感情にも寄り添えることが、これからの医療施設に求められる空間条件と言えるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。
この記事を書いた人
株式会社丹青社
