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WELL認証とは?|認証項目や取得のメリット、手順を解説
ワークプレイス |
WELL認証は、健康的に働ける空間を評価する認証制度です。少子高齢化により働き手が減少する中、よりよい人材を確保するためにもワークライフバランスやSDGsの重要性が高まっており、WELL認証にも注目が集まっています。本記事ではWELL認証の概要や評価項目、取得手順などを解説します。
目次
WELL認証とは
WELL認証とは、オフィスで働く人のウェルビーイングを目指す世界的な認証制度です。日本では一般財団法人グリーンビルディングジャパンによって運用されています。
WELL認証が目指すウェルビーイングとは、身体的・精神的、そして社会的・経済的にも健康で満たされている状態を指す言葉です。職場のウェルビーイングは、従業員の意欲と密接に関わっています。すなわち、従業員が満たされた状態にあると企業全体の生産性が向上するといえるでしょう。
職場環境が良好だと離職率は低下し、求職者からの人気も上がります。そのため優秀な人材を確保しやすくなり、また生産性の高い従業員が多ければ同じ従業員数でも高いパフォーマンスが期待できます。良好な職場環境を体外的にアピールできるWELL認証の重要性は、ますます高まるでしょう。
WELL認証とLEED認証との違い
WELL認証と同様に、オフィスを評価する認証制度に「LEED認証」があります。
LEED認証は、環境に配慮した建物(グリーンビルディング)を評価する認証制度です。WELL認証もLEED認証も、SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する社会的な流れを受けて成立した制度ですが、WELL認証は建物の内部で働く人の健康、LEED認証は建物自体の性能や外部環境に焦点を当てた取り組みである点が異なります。
WELL認証の評価項目
WELL認証には、項目ごとに必ず満たす必要がある「必須項目」と、より高度な認証につながる「加点項目」が設定されている10の評価項目があります。この10項目に加点項目のみの「イノベーション」という項目が加えられた11項目が、WELL認証の評価項目です。
出典:WELL v2 評価項目 | Green Building Japan
空気(AIR)
必須項目 |
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1. 空気の質 |
2. 禁煙環境 |
3. 換気の設計 |
4. 建設段階での汚染管理 |
加点項目 |
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1. 空気の質の向上 |
2. 換気の設計の強化 |
3. 開閉可能な窓 |
4. 空気の質のモニタリング・啓発 |
5. 汚染侵入の管理 |
6. 燃焼の最小化 |
7. 汚染発生源の分離 |
8. 空気の濾過 |
9. 給気の強化 |
10. 微生物・カビの抑制 |
水(Water)
必須項目 |
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1. 水質 |
2. 飲料水の質 |
3. 基本的な水質管理 |
加点項目 |
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1.水質の向上 |
2.飲料水の水質管理 |
3.飲料水摂取の推進 |
4.湿気の管理 |
5.衛生に対する支援 |
6.非飲料水の再利用(β) ※β…試験的に運用中の項目 |
食物(Nourishment)
必須項目 |
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1. 果物・野菜の摂取促進 |
2. 栄養の透明性 |
加点項目 |
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1. 精製成分 |
2. 食品広告 |
3. 人工的な原材料 |
4. 1人前の適切な分量 |
5. 栄養教育 |
6. 心豊かな食事機会の推奨 |
7. 特別食 |
8. 食事を準備する設備 |
9. 責任のある食品調達 |
10. 食品生産 |
11. 地元の食環境 |
12. レッドミートと加工肉(β) |
光(Light)
必須項目 |
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1. 光曝露 |
2. ビジュアル照明デザイン |
加点項目 |
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1. サーカディアン照明デザイン |
2. 照明設備のグレア制御 |
3. 昼光を利用するデザイン戦略 |
4. 昼光のシミュレーション |
5. 視覚的バランス |
6. 照明設備の質 |
7. 利用者による照明制御 |
運動(Movement)
必須項目 |
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1. 活動を促す建物とコミュニティ |
2. 人間工学に配慮した作業空間 |
加点項目 |
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1. 移動空間のネットワーク |
2. アクティブ通勤のための設備 |
3. 敷地の計画と選択 |
4. 運動の機会 |
5. アクティブな什器 |
6. 運動のためのスペース・器具 |
7. 運動の促進 |
8. 自己モニタリング |
9. 人間工学のプログラム |
温熱快適性(Thermal Comfort)
必須項目 |
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1. 温熱性能 |
加点項目 |
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1. 温熱快適性の検証 |
2. 温度のゾーニング |
3. 個別の温度制御 |
4. 熱輻射による温熱快適性 |
5. 温熱快適性のモニタリング |
6. 湿度管理 |
7. 高度な開閉可能窓(β) |
8. 屋外の温熱快適性(β) |
音(Sound)
必須項目 |
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1. 音響マッピング |
加点項目 |
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1. 最大騒音レベル |
2. 遮音壁 |
3. 残響時間 |
4. 吸音性能の仕上げ |
5. 最低限の暗騒音 |
6. 衝撃音の管理(β) |
7. 音響機器の強化(β) |
8. 聴覚健康保全(β) |
材料(Materials)
必須項目 |
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1. 材料の制限 |
2. 室内の有害材料の管理 |
3. クロム銅ヒ素系木材防腐剤と鉛の管理 |
加点項目 |
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1. 敷地の浄化 |
2. さらなる材料の制限 |
3. 揮発性化合物の制限 |
4. 材料の透明性 |
5. 材料の最適化 |
6. 廃棄物の管理 |
7. 有害生物管理と殺虫剤使用 |
8. 清掃用品と清掃手順 |
9. 接触の削減(β) |
こころ(Mind)
必須項目 |
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1. メンタルヘルスの促進 |
2. 自然と環境 |
加点項目 |
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1. メンタルヘルスサービス |
2. メンタルヘルスに関する教育 |
3. ストレス管理 |
4. 回復の機会 |
5. 回復スペース |
6. 回復プログラム |
7. 自然へのアクセス促進 |
8. 禁煙 |
9. 薬物使用に関する教育・サービス |
コミュニティ(Community)
必須項目 |
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1. 健康・ウェルビーイングの促進 |
2. 統合的なデザイン |
3. 緊急時に備えた準備 |
4. 入居者の健康に関する調査 |
加点項目 |
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1. さらなる入居者健康調査 |
2. 保険サービスと給付 |
3. 健康・ウェルビーイングのさらなる促進 |
4. 新生児の両親に対する支援 |
5. 新生児の母に対する支援 |
6. 家族支援 |
7. 市民参加 |
8. 多様性と包摂 |
9. アクセシビリティとユニバーサルデザイン |
10. 緊急時の対応機器 |
11. 緊急時の回復力(β) |
12. アフォーダブルな住宅(β) |
13. 責任ある労働条件の実践(β) |
14. DV被害者の支援(β) |
15. 教育と支援の確立(β) |
16. 歴史的認知の提供(β) |
イノベーション(Innovation)
加点項目 |
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1. WELLのイノベーション |
2. WELL APの参加 |
3. WELL教育 |
4. ウェルビーイングへの入り口 |
5. グリーンビルディング評価システム |
6. 炭素排出開示と削減(β) |
WELL認証取得のメリット
WELL認証を取得すると、企業にとってさまざまなメリットがあります。ここではWELL認証取得によるメリットを具体的に解説します。
従業員が健康的に働ける
WELL認証を取得すると、従業員が健康的に働ける環境が整備されます。ウェルビーイングを目指すことで従業員の身体的・精神的健康に配慮する健康経営にもつながり、企業の対外的な評価が高まるでしょう。また、従業員が生き生きと働けるようになれば、社内の雰囲気もポジティブになります。
生産性が高まる
従業員が健康的に働きエンゲージメントが向上すると、1人ひとりの生産性が高まります。WELL認証の項目のうち、「こころ」や「コミュニティ」が生産性向上につながるのはもちろん、「運動」も脳に刺激を与えるため生産性向上につながるでしょう。オフィス内に軽い運動ができるスペースを作るなどの施策も有効です。
企業の社会的な評価が高まる
SDGsやESGは社会的なトレンドであり、企業の評価ポイントとしての重要性が高まっています。WELL認証を取得することで、従業員のウェルビーイングや環境に配慮していることが対外的にアピールでき、企業のイメージアップにもつながるでしょう。
WELL認証を取得する条件
WELL認証を取得するには、「WELL認証の評価項目」の章で紹介した10カテゴリの必須項目を全て満たすことが必要です。さらに加点項目の点数によってWELL認証のランクが決まり、最高のランクがプラチナ、以下ゴールド、シルバー、ブロンズと続きます。
基準は随時更新されるため、取得を目指す場合は一般財団法人グリーンビルディングジャパンの公式ホームページから最新版を確認しましょう。
WELL認証取得の手順
WELL認証を取得するには、定められた手順に沿って書類審査や現地調査などを受ける必要があります。ここではWELL認証取得までの流れを3ステップに分けて解説します。
1. 書類審査
まずは国際WELLビルディング協会(IWBI)に登録し、必要書類を提出しましょう。手続きはオンラインで完結できます。
書類を提出してから結果が通知されるまでには20〜25営業日かかります。不備を指摘されるケースが多いため、その場合は指示に従って修正し、再提出しましょう。
2. 現地調査
書類審査を通過したら、IWBIが実際の建物を訪れる現地調査が入ります。IWBIとスケジュールを調整し、現地調査の日程を決めましょう。
現地調査では、3〜4日かけて空気や光、音などの環境調査や、その他の各種チェックが行われます。結果が通達される時期の目安は現地調査から9週間ほどで、不備があった場合はここでも修正対応が必要になるため心構えをしておきましょう。
3. 最終審査・認証取得
現地調査後にIWBIで最終審査が行われ、無事に通過すればWELL認証を取得できます。
ただし、認証は永続的なものではありません。継続的な環境改善が求められているため、有効期限は3年です。認証を継続するためには、再認証の手続きを行う必要があります。
WELL認証の事例紹介|point 0 marunouchi
ここでは、実際にWELL認証を取得した事例として「point 0 marunouchi」を紹介します。
point 0 marunouchiは東京都の丸の内に位置するコワーキングスペースで、日本のコワーキングスペースとして初めてWELL認証を取得しました。利用者の心身の健康をベースとした創造性を重視するコンセプトで設計され、本物の植物を使用した緑あふれる空間は特に高い評価を得ています。
point 0 marunouchiの特徴の1つは、オフィスの環境についての実証実験の展開です。例えば、過去にはオフィス空間におけるアートの効果検証や、AIカメラ活用による会議室の整理整頓状況可視化などの実証実験が行われました。
まとめ
WELL認証は、オフィスで働く人のウェルビーイングを目指す認証制度であり、身体的・精神的な健康のみならず社会的・経済的にも満たされている状態を理想としています。WELL認証は企業のイメージアップにつながり、従業員の生産性アップも見込めます。
株式会社丹青社は、商業施設・⽂化施設などの空間づくりを手がけています。多様な施設の調査・企画・設計・施工・運営管理まで幅広い分野をカバーする総合力が強みです。文化施設事業においては専門のシンクタンクを備えており、業界No.1のシェアを誇っています。
この記事を書いた人
株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。
この記事を書いた人
株式会社丹青社