旅館の内装をデザインする際のポイントは?内装に関する注意点も解説

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旅館の内装は、旅館のコンセプトを表現するうえで重要な役割を果たします。集客や売上にも影響するため、旅館の内装には特に力を入れるべきだといえるでしょう。

この記事では、旅館の内装をデザインする際のポイントについて解説します。旅館の内装に関する注意点や内装工事費用を節約する方法などについても解説するため、ぜひ参考にしてください。

旅館の内装が重要な理由

旅館の内装が重要である理由は、旅館のコンセプトを表すものだからです。ターゲットである顧客層に響く内装を実現できると、集客や売上にいい影響を与えることができます。また、旅館の内装に力を入れれば、世間から見た旅館のブランドイメージを向上させることにも繋がるでしょう。

また、内装や室内の雰囲気に魅力を感じた顧客は、再訪する可能性が高い傾向にあります。内装の良し悪しはリピーターの獲得も左右するため、旅館のコンセプトを活かしながら魅力的なデザインに整える必要があります。

なお、内装が魅力的な旅館は、働くスタッフの自信や旅館に対する愛着にもつながる可能性が高いです。スタッフのモチベーションが高まり、サービスの質にもよい影響を与えるでしょう。

参考:沖縄県「5.宿泊施設のリピーターに関する分析」

旅館とホテル・簡易宿所・下宿の違い

旅館とホテル・簡易宿所・下宿の違いは、旅館業法で定められています。従来は、旅館には和式の構造や設備が必要であるのに対し、ホテルには洋式の構造や設備が必要であるなどの区別がありましたが、2018年の法改正により法律上は旅館とホテルの区別がなくなりました。また、旅館やホテルにはフロントを必ず設置しますが、簡易宿所と下宿では必要ありません。

ほかにもさまざまな違いが定められており、各施設として運営するには条件を満たす必要があります。旅館業法は時代の変化に合わせて改正されているため、必要に応じて確認しましょう。

参考:旅館業法の概要等について

旅館の内装をデザインする際のポイント

旅館の内装デザインには、意識すべきさまざまなポイントがあります。以下でくわしく解説します。

コンセプトを明確にする

すでに触れたとおり、旅館の内装はコンセプトを表すものです。そのため、旅館の内装をデザインする際は、まずコンセプトそのものを明確にする必要があります。コンセプトは、競合との差別化や顧客満足度の向上などを目指すうえでも重要です。

コンセプトを決める際は、市場調査で競合の状況を把握したりターゲットの顧客層を決めたりしましょう。集客や売上を確保するには、他にはない独自のコンセプトを打ち出すことが大切です。

宿泊客とスタッフの動線は分ける

旅館の内装は、宿泊客とスタッフの動線を考えましょう。たとえば、大浴場の前に休憩スペースを設けて自販機やソファなどを設置すると、宿泊客にとって利便性が高くなります。また、スタッフが各施設や部屋を効率よく行き来できるレイアウトにすると、作業効率がアップします。

このように、旅館では宿泊客とスタッフがそれぞれ異なる動きをするため、動線を分けて内装のデザインを決めましょう。

部屋を広く見えるようにする

部屋の大きさには限りがあるため、視覚的になるべく広く見えるようにレイアウトしましょう。たとえば、家具の配置を工夫するだけでも空間をより広く見せられます。また、部屋の広さや窓の大きさなどを考慮したうえで、適切なサイズ感のインテリアを選ぶことも大切です。

照明と内装の色味をそろえる

照明と内装の色味をそろえれば、統一感を出せます。具体的には、壁紙、床材の色、照明の色味を統一すると、全体の雰囲気が柔らかくなり、上品な印象になります。

照明と内装の色味が乖離している場合、統一感がないことで印象が悪くなる恐れがあるため、注意が必要です。特に照明は調整が難しく、暗すぎる場合や青白い場合もイメージダウンにつながります。照明は温かみのあるものを採用し、畳やふすまなどの色味を引き立てましょう。

客室からの眺望を良くする

旅館の内装のデザインにおいては、客室からの眺望の良さも重要です。旅館への宿泊を検討している人は、眺めの良さや窓から見える景観を重視している場合が多いためです。窓の種類は多岐に渡り、種類によってイメージは大きく変化します。旅館のコンセプトや窓を設置する目的に合わせ、適切なものを選択しましょう。

旅館の内装に関する注意点

旅館の内装については気をつけるべきこともあります。ここでは、具体的な注意点を解説します。

旅館業法を遵守する

旅館の内装は、旅館業法に則って決める必要があります。施設を旅館として運営するには、旅館業法に基づく施設基準を満たさなければならないからです。旅館の内装をデザインする際に満たすべき条件は、以下の通りです。

場所内容
客室1部屋の床面積が7平方メートル以上(寝台を置く客室は9平方メートル以上)
フロント宿泊者が必ず通る場所に設置する(フロントに代替する設備を設けることで設置不要とできることがありますが、自治体の条例によって規制が異なる場合があります。)。
入浴設備旅館内または近隣に公衆浴場がある。
各種設備換気、採光、照明、防湿、排水、トイレなどがある。

参考:旅館業法の概要等について

消防法を遵守する

旅館の内装を決める際は、消防法も遵守する必要があります。消防法では、火災予防や消火活動などに配慮するための内装の制限について定められています。具体的な内容をまとめると、以下の通りです。

・火災予防や消火活動のしやすさを重視した建築構造
・警報設備の設置
・火災の煙を排除する設備の設置
・消火栓の設置
・燃えにくい素材や防火・防炎の機能をもつ絨毯・カーテンなどの指定

参考:消防法 | e-Gov法令検索

建築基準法を遵守する

建築基準法では、火災が発生した直後の避難経路を確保するために必要な内装の制限が定められています。消防法と同様に火災に関する制限ですが、建築基準法は建築物自体ついての制限に特化しています。

参考:建築基準法 | e-Gov法令検索

防火材料の種類や特徴

防火材料の種類は、発火までの時間によって3つに分類されています。防火材料の種類や具体例などをまとめると、以下の通りです。

防火材料の種類発火までの時間防火材料の具体例
不燃材料20分コンクリート、レンガ、漆喰など
準不燃材料10分厚さが15mm以上の木毛セメント板
難燃材料5分厚さが5.5mm以上の難燃合板

なお、発火までの間に有害な煙やガスが発生せず、変形や溶解などによる損傷が生じないことも条件となっています。

参考:不燃材料を定める件
参考:準不燃材料を定める件
参考:難燃材料を定める件

旅館の内装工事費用を節約する方法

旅館の内装工事費用を節約するには、いくつかのポイントがあります。以下で具体的な方法を解説します。

相見積もりを実施する

内装工事費用をなるべく安くするには、相見積もりが重要です。同じ工事を依頼しても、業者によって提示する費用はそれぞれ異なります。そのため、複数の業者に見積もりを出してもらい、最も費用が安い業者を選びましょう。

費用以外の面も含めて信頼できる業者を選びたい場合は、契約したい業者にほかの業者の見積もりを見せて減額を交渉する方法もあります。

補助金を活用する

補助金のなかには、旅館の内装工事に活用できる制度もあります。補助金を活用すると、内装工事にかかる費用の負担を実質的に抑えられるでしょう。それぞれ必要な書類や期間などが異なるため、よく確認して申請する必要があります。

旅館の内装工事に活用できる補助金としては、たとえば、事業再構築補助金や、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金などがあります。国ではなく地方自治体が独自に実施している補助金制度もあるため、活用できるものがないか探してみるのもよいでしょう。

参考:事業再構築補助金
参考:ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト

まとめ

旅館の内装はコンセプトを表すものであり、集客や売上の向上を目指すうえでも重要な要素です。コンセプトを明確にしたうえで、動線や視覚的な効果を意識してデザインしましょう。ただし、旅館業法、消防法、建築基準法なども遵守しなければならず、専門的な知見も必要です。

丹青社は、さまざまな施設の調査、企画、設計、施工、運営管理に対応できる総合力を誇ります。多くの分野で高い実績があり、高いシェアや競争優位を獲得しています。旅館のコンセプトに沿った魅力的な内装のデザインも提案可能なため、ぜひご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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