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日本の魅力再発見!インバウンドが今注目するコンテンツと関連スポット紹介
ホスピタリティ |
新型コロナウイルスの収束に伴い、日本のあちこちでインバウンド観光客の姿が見られるようになった昨今。一体彼らは日本のどこに魅力を感じ、何に心を動かされているのでしょうか。今回のレポートでは、インバウンド観光客が注目する日本ならではのコンテンツと、それに関連する国内スポットを紹介します。
※このレポートは2025年1月に執筆されたものです。
※レポート内のリンクは執筆時に確認した外部Webサイトのリンク、画像はイメージ画像になります。
01.修行体験しながらラグジュアリーなひとときを
宗教の違いに関心を寄せる欧米からの観光客
インバウンド観光客は、「宗教」という点で自らの文化と日本の文化の違いに興味を持つことがあるようです。特に、仏教文化が日常にない欧米からの観光客のなかには、宿坊で体験できるような寺院独自の習慣に関心を寄せる人が多くいるそうです。アメリカ発の掲示板型ソーシャルメディアプラットフォーム「レディット(Reddit)」でも、宿坊での宿泊体験や宿坊を選ぶ際のアドバイスなどを質問する書き込みが散見されます。
最近の傾向として、富裕層のインバウンド観光客をターゲットにした、和と洋が融合したラグジュアリーな客室を備える宿坊が増えていることがうかがえますが、多くの場合はこうした客室に加え、日本古来の仏教を堪能できるさまざまな体験を用意しています。宿泊者しか味わえない贅沢な宿坊体験は、好評を博しているようです。

関連スポット1:「高野山 恵光院」(和歌山県)
宿泊者は、朝勤行・護摩祈祷・阿字観(瞑想)・写経といった、宿坊ならではの修行体験ができます。高野山の伝統を感じながら、じっくりと己の心と向き合う癒しの時間を過ごせるでしょう。また、食事は自然の素材をたっぷり用いた精進料理を提供。肉・魚が使われていないため、ベジタリアンやヴィーガンの方も楽しめます。
日本仏教の聖地・高野山にある「高野山 恵光院」は、およそ1200年もの歴史ある宿坊寺院。目玉となるのは、2022年3月にオープンした高野山最大級のスイートルーム「月輪」です。広さ約100㎡の客室には、広々としたベッドルームに加え、プライベートな半露天風呂、庭園、縁側といった日本らしい落ち着いた空間が展開されています。「月輪」のほかにも、2024年4月には和の伝統と洋の快適さが融合したジュニアスイートルームやデラックスルーム計4室が続々とオープン。それぞれの客室はこちらから見ることができます。
関連スポット2:「宿坊 和空三井寺」(滋賀県)
「宿坊 和空三井寺」は、1300年以上の歴史を持ち、「不死鳥の寺」とも呼ばれる三井寺(園城寺)の僧坊・妙厳院をリノベーションして生まれた宿坊です。一日限定一組に一棟貸しするスタイルなので、美しい自然に囲まれながら周りを気にせず寛ぐことができます。加えて、通常は非公開の客殿での坐禅をはじめとする、国宝を含む文化財の数々を独り占めできる宿泊者限定の体験は、この上なく贅沢でしょう。
敷地面積約807㎡、400年もの歴史を持つ僧坊の内部は、外国人にも使いやすくベッドや居間を備えた3LDKと仏間に一新。梁や柱はそのまま残っており、スタイリッシュな雰囲気と昔の趣が共存しています。インテリアは、日本伝統の小紋柄をジャガード織にしたベッドスローやシルクシェードのランプなど、職人の手仕事が光ります。宿坊の各部屋の様子はこちらから確認できます。
● 高野山 恵光院 / 和歌山県伊都郡
● 宿坊 和空三井寺 / 滋賀県大津市 / 2018年 現在の宿坊としてオープン
02.陶器、刀鍛冶…日本の伝統技術にふれる
職人文化は尊敬の対象。職人の手で作られたものを旅の思い出に持ち帰る人も
日本の職人文化は海外から注目されており、何百年も続く磨き上げられた技法に対して尊敬を抱く人が多いようです。特に、日本各地でつくられる焼物は、茶文化がある中国からの観光客をはじめ、お土産としても高い人気を誇っているとのこと。産地まで足を運んで購入する人もいるそうです。「お土産は『一生モノ』を買いたい」と吟味して選ぶ観光客もいるようで、高い品質と魅力的なデザイン、日本らしさを兼ね備えた伝統工芸品は最適なのかもしれません。また、サムライの人気もあってか、日本刀をお土産に欲しがる人もいるみたいです。
関連スポット1:「滞在型作陶施設HO-KA」(岐阜県)
「滞在型作陶施設HO-KA」は、日本を代表する焼物の一つである美濃焼の本場・岐阜県多治見市にある、宿泊施設完備の陶芸教室です。初心者から上級者まで1か月間の滞在を基本としていることが最大の特色で、基礎から難易度の高い技術まで、陶芸家の先生からじっくりと学ぶことができます。滞在用のゲストルームは4つあり、いずれも日当たりの良いリビングルームとベッドルーム、シャワールーム、キッチン設備が整っています。
滞在中の食事は自分で調理するので、最寄りのスーパーマーケットや商店、美味しい飲食店情報を教えてくれるのも嬉しいポイントです。2012年にオープンして以来、海外を中心に200を超えるゲストを受け入れています(2024年11月時点)。以前滞在した人からの紹介で訪れるゲストやリピーターも多いとのことです。

関連スポット1:「淺野鍛冶屋」(岐阜県)
岐阜県羽島市にある「淺野鍛冶屋」は、日本刀や刀鍛冶の技術を応用した包丁を制作しています。世界各国での日本刀の公開鍛錬など、日本刀の魅力を広める活動も続けており、2015年からはワークショップ「鍛造ナイフ作り体験」を開始しました。
刀匠から刀鍛冶の伝統技法を直接学びながらナイフを制作するワークショップの所要時間は約7時間。鎚(つち)で打ち延ばす・金やすりで整える・刃付け・焼き入れ・研ぎなどの鍛造に挑戦します。完成したナイフは、当日のうちにお土産として持ち帰ることができます。実際に体験した外国人観光客からは、本格的なプランと丁寧な指導を高く評価する口コミが多数寄せられています。
● 滞在型作陶施設HO-KA / 岐阜県多治見市 / 2012年オープン
● 淺野鍛冶屋 / 岐阜県羽島市 / 2004年オープン(鍛造ナイフ作り体験は2015年から開始)
03.変化しつつあるアニメ・ゲームファンの観光ルート
「日本のアニメ・ゲームファン」は多様化している
ゲームやアニメを目当てに日本にやってくるインバウンド観光客が向かう先は、オタク文化の聖地・秋葉原に限らないようです。
昨今はむしろ、池袋や中野ブロードウェイが海外からのアニメ・ゲームファンで賑わっているそう。中野ブロードウェイには懐かしさを求めてやってくる人、池袋には最新のアニメグッズを求めてやってくる人というように、アニメ・ゲームファンの好みや目的はさまざまで、訪れる場所も多様化しつつあることがうかがえます。

関連スポット1:「中野ブロードウェイ」(東京都)
さまざまなジャンルのコレクターズアイテムを扱うショップ「まんだらけ」を筆頭に、漫画やおもちゃ、アニメなどの専門店が数多く出店する中野ブロードウェイ。ここを訪れる外国人は、昔のアニメグッズを買うことを目的に日本へやってきた、いわゆる「マニア」の存在が目立ちます。最近は、レトロな漫画やアニメのムック本を探す外国人が増えているそうです。また、海外では日本のロボットアニメが昔から人気だったこともあり、ヴィンテージのロボットのおもちゃを買い求める人も多いようです。あわせて、レトロゲームも売れ筋商品。一般的な外国人観光客は、ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)などの新しいゲーム機を購入する一方、マニアにはファミコンなど昔の機種が今になって人気を集めているというから驚きです。
関連スポット2:「池袋周辺(アニメ東京ステーション、乙女ロードなど)」(東京都)
アニメコンテンツの活用をめざした施設、「アニメ東京ステーション」が2023年10月に池袋にオープン。アニメ産業・文化・観光のさらなる発展の礎となる場所として東京都が開設しました。施設は地下1階〜地上2階の3フロアで構成され、展示や体験イベントを通してアニメについてより深く知ることができる「ARCHIVES/アニメ制作資料保存」、コミュニティスペースとしての機能を持つ「PLATFORM/総合情報プラットフォーム」、企画展示室とグッズストアがある「EXHIBITION/関連企画展示」が各フロアで展開されています。
そのほか池袋には、アニメ関連ショップが集積するエリアがあります。通称:乙女ロードは、池袋のランドマーク・サンシャイン60の西側の全長200mの通りで、アニメや漫画のキャラクターグッズを取り扱う専門店やカフェなどが立ち並び、インバウンド観光客にも人気のエリアです。乙女ロードのすぐ近くには日本最大級のアニメグッズ専門店の一号店である「アニメイト池袋本店」も。40周年を迎えた2023年に大幅リニューアルしています。多目的ホールや展示会スペース、カフェも併設され、グッズ販売にとどまらない、アニメや漫画の世界をさまざまなかたちで体感できるような施設となりました。
● 中野ブロードウェイ / 東京都中野区 / 1966年オープン
● アニメ東京ステーション / 東京都豊島区 / 2023年オープン
● 乙女ロード / 東京都豊島区
Researcherʼs Comment
本レポートでは、インバウンド観光客の注目を浴びるコンテンツとその関連スポットを紹介しました。いずれも日本ならではのものなので人気が出るのも納得ですが、それぞれ「なぜ」「どのような要素が」外国人を惹きつけるのかという点では、意外性を感じる部分もあったのではないでしょうか。インバウンド観光客の動向からは、日本文化の豊かさや独自性に改めて気付くことができそうです。
多くの旅行者が利用する空港やホテル、アミューズメント施設などにも、今回取り上げた3つのコンテンツを取り入れることができるかもしれません。限られたスケジュールの中で、できるだけたくさんの日本文化を堪能したいと考えるインバウンド観光客も多いはず。例えば空港では、フライトの待ち時間を活用して文化体験ができるエリアや、職人の技や作品を紹介するスペースを設けることで、旅をより充実させることができるでしょう。空港を単なる通過点ではなく、一つの観光スポットとして活かすことで、ゲストの満足度向上が期待できます。
ホテルでは、より深い文化体験を宿泊の一部として取り入れることが考えられます。例えば、修行体験に着想を得て、館内に静寂を楽しめる禅スペースや瞑想ルームを設置し、滞在中に心身のリフレッシュができる環境を整えることで特別な滞在を演出できます。また、地域の職人と連携し、陶芸や漆器などの伝統工芸品をホテル内で実際に使用したり、ギャラリースペースとして展示したりすることで、日常生活の中に息づく日本の技を感じさせることもできるでしょう。
また、アミューズメント施設では、座禅や写経などの修行体験をアトラクションとしてアレンジしたり、陶芸や刀鍛冶などの伝統技術をバーチャル体験で気軽に楽しめるエリアを設置したりすることで、訪日客に日本文化の多様性を伝えることができるかもしれません。
このように、施設内に「今、ホットな日本コンテンツ」を感じられる空間が広がっていれば、来訪者の気分も高まることでしょう。まるで自己紹介をしているような空間は、歓迎ムードを醸し出せそうです。インバウンド観光客をターゲットとした施設におけるコンテンツ、空間演出の検討に向けて、本レポートが参考になれば幸いです。(丹青研究所 国際文化観光研究室)
この記事を書いた人

丹青研究所
丹青研究所は、日本唯一の文化空間の専門シンクタンクです。文化財の保存・活用に関わるコンサルや設計のリーディングカンパニーであるとともに、近年は文化観光について国内外の情報収集、研究を推進しています。多様な視点から社会交流空間を読み解き、より多くの人々に愛され、求められる空間づくりのサポートをさせていただいております。 丹青研究所の紹介サイトはこちら

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