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地域と繋がる「エシカルモール」へ|細部までこだわり抜いてつくりあげたイオンモール幕張新都心リニューアル
サステナビリティ |
イオンモール幕張新都心『ファミリーモール』が、2023年の幕張豊砂駅の新設に伴いエシカルな『エキマエモール』へとリニューアル。「Hello! Ethical」をコンセプトに掲げた本プロジェクトでは、お客様との接点が最も多いラウンジ空間と共用部のFFEを丹青社が担当。リサイクル素材の活用はもちろん、メーカーから出る端材の使用や施設内のテナントで不要になったアイテムの再利用、千葉大学との産学協働など、随所にエシカルの考え方を取り入れています。
今回はプロジェクトを主導したイオンモール株式会社の小林様をお迎えし、当社設計担当の高橋、営業担当の江連を交えて話を伺いました。
Profile |
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小林 純一様(左) イオンモール株式会社 東日本支社 首都圏事業部長 1995年にイオン興産株式会社(現イオンモール株式会社)入社以来、国内外のSC開設に携わり、国内複数のイオンモールでゼネラルマネージャーを経験。リーシング本部特命部長、リーシング企画部長などを経て、2019年2月よりイオンモール幕張新都心ゼネラルマネージャーに就任。2024年3月より現職。 |
高橋 淳一(中) 株式会社丹青社 BIMデザイン局 BIMマネジメント室 1グループ グループ長 チーフクリエイティブディレクター 入社以来、大型複合商業施設の空間づくりを中心に担当。「街をより良くする商空間」を常に意識し、開発段階からMD計画とともにデザインを練り上げることを得意とする。同時にデザイン部門におけるBIM導入の推進者を担い、ディスプレイ業におけるBIMの実装を牽引している。 |
江連 舞果(右) 株式会社丹青社 商空間事業部 プロジェクト開発統括部 営業部 営業3課 課長 大型商業施設を中心に、営業として数々の空間づくりに携わる。お客さまに寄り添いながらスケジュールや予算を管理し、プロジェクトのスタートから納品まで伴走することを特に意識している。丹青社内のサステナビリティの取り組みを発信するチームに所属した経験を活かし、持続可能な空間づくりを実践中。 |
「エシカルモール」は地域の方々と館を繋ぐ存在
高橋 当時イオンモール幕張新都心のゼネラルマネージャー(GM)だった小林さんが、丹青社のOBであり千葉大学の卒業生でもある方とお付き合いがあり、紹介していただく形で本プロジェクトがスタートしました。「エシカル」というキーワードは、小林さんからお話をいただいた段階からプロジェクトの核にありましたね。
小林 私は2019年からイオンモール幕張新都心のGMを務めていたのですが、今回の大規模リニューアルが決定したときから「エシカル」をテーマに据える構想を思い描いていました。社会的なトレンドとして生活者の意識が高まっているテーマだと感じており、何よりも私たちは地域のためになりたいという想いを心の底から大切にしているので、「エシカル」を軸にしたリニューアルには必然性を感じていましたね。
高橋 「SDGs」「サステナブル」といった言葉が世の中に浸透している中で「エシカル」をテーマに据えたのは、やはり地域への視点があったことが大きかったのでしょうか?
小林 そうですね。やはり、地域の皆さまがあってこその私たちですから。
江連 いわゆる「エコ」の取り組みではなく、「地域」という観点が入ることでより身近に感じられるようになったと思います。
小林 社内外に「エシカル」の定義を説明する際には、「人・社会」「環境」「地域」の3つを大切にすることだと話していました。自分自身で定義を明確に持つことで、どういった取り組みを推進していくのか、ブレない判断軸を持って進めることができたと思います。
高橋 私たちとしても、そこから空間づくりで何ができるか。時間をかけて検討していきました。商業施設である以上、お客さまに来館いただいて初めて空間の価値が生まれます。ですので、「ものをつくる」のではなく「場所をつくる」という考え方で、どんな素材を使うのか、地域とのつながりをどう表現するのかなどを提案していきました。
江連 私は予算やスケジュールなどを含めて総合的にプロジェクトを進行管理していく立場でしたが、小林さんの中にブレない想いがあったのですごく安心感がありました。正解のあるプロジェクトではないので、どこに何をつくるかという段階から相談しながら進められたのは、とてもいい経験になりました。
メーカーや協力会社、大学とも協働して空間をつくりあげる
高橋 具体的な取り組みとしては、まず2階の「EKIMAE LOUNGE」ですね。ファッションロスをテーマに据え、廃棄衣類のアップサイクルで再資源化されたリサイクルボード「PANECO」をキーマテリアルに採用しています。また、メーカー側で出た端材やイベント使用後の廃棄材などを半年かけて収集・保管いただき、ベンチの意匠に使用しました。不要衣料品をPANECOに再生する回収BOXも設置させていただき、空間全体を通して、余ったものや捨てられるものを集め、デザインの力で循環を生み出すことに挑戦しています。
江連 メーカーや制作会社をはじめ、協力会社の皆さまにもいろいろとご尽力いただきました。おかげで、エシカルとクオリティを両立した空間になったと思います。また、私たちとしても初めて取り組むことが多い中で、小林さんへの提案時に材料が確定しておらず、具体的なイメージが出来ていないこともありました。それでも「あとは任せます」と言い切ってくださったのは、とてもありがたかったです。
小林 結局、最後は一番こだわりを持った人を信じて任せるというのが成功への近道ですから。丹青社さんのデザイン力を信頼していましたし、仕上がりには本当に満足しています。「EKIMAE LOUNGE」には千葉大学との産学協働で取り組んだオブジェも設置しました。産学協働は特にこだわってやり切りたいと考えていたテーマなので、形にできてよかったです。
高橋 オブジェの制作では千葉大学の学生に向けて学内コンペを実施し、デザインを募集しました。選出されたデザインを学生と共に詰めていき、アートディレクションと技術面のサポートを丹青社サイドで行っています。こちらにも廃材や端材を使用しているのですが、選出された学生の熱量がとても高く、私たちとしてもいい刺激になりましたね。蝶々には再生・復活のメッセージを込め、「エシカルを感じさせるオブジェ」に仕上がりました。
プロジェクトで得た経験をこれからも活かしていく
高橋 3階の「ECHICAL LOUNGE」においては、「プラゴミ」をテーマに様々な取り組みに挑戦しました。床材、壁面材、ベンチ、シャンデリアなど、随所に再生材や端材を使用しています。コロナ禍に館内で使用していたアクリルパーテーションを素材として再利用することで、館内循環も実現しました。1・2階の共用部ベンチにもこだわっており、天板は千葉県産集成材を採用し、側面の意匠は館内既存店舗の解体廃材(天井ルーバー)を譲り受けて再利用しています。
江連 どのフロアにおいても、前例のない取り組みに対して小林さんをはじめとするイオンモールの皆さまと一緒に考え、完成できたことが、本プロジェクトを通じて得た最大の経験だと思っています。これから丹青社として「エシカル」を取り入れた空間を提案していく機会は増えていくと思いますが、常にお客さまに寄り添い、一緒につくりあげていく姿勢を大切にしたいです。
高橋 空間の形としてどう見られたいかではなく、その空間を利用するお客さまやユーザーの方に何を感じてもらいたいのか。そういった視点でプロジェクトをやり切れたことに大きな価値があると感じています。今回は「エシカルを学ぶ」ではなく「感じる」ことができるような空間づくりにこだわれたことで、老若男女さまざまな方が訪れるイオンモール幕張新都心だからこそ発信できる表現になったと思います。隅々の素材にまでこだわり抜けたのは、デザイナーとしてとてもいい経験になりました。
小林 仕事は一人では完結できません。本プロジェクトもたくさんの方に協力いただいたおかげで、こだわりを持ってやり抜くことができました。館内のスタッフやお客さまの反応はもちろんですが、一番満足しているのは私自身です。これからも、地域のお客さまに長く愛される施設であり続けられるよう、挑戦し続けたいと思います。
この記事を書いた人
株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。
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株式会社丹青社