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サーキュラーエコノミーのためにRラダー・10Rの最上流から「長く愛されるデザイン」で挑む丹青社
サステナビリティ |
丹青社は、持続可能な社会を実現するための設計手法として「サステナブル設計ガイドライン」を2025年5月に策定しました。ガイドラインには、日々の実務でサーキュラーエコノミーなどサステナビリティに対応していくための考え方と具体的な活動がまとめられています。
その背景の一つが、資源循環の優先順位を示す「Rラダー」「10R」の概念です。Rから始まる10のキーワード「10R」で構成される「Rラダー」。その最上流にあるRefuse、Rethink、Reduceに直接作用できる重要な役割を持つのがデザインです。
丹青社は内装・ディスプレイ業としての実務的な効果と実現性から、最上流のReduce(削減)、そしてReuse(再利用)とRecycle(リサイクル)の3Rを重要視し、「長く愛されるデザイン」に取り組んでいます。それは、陳腐化しにくい美しさと、将来的な改修や転用を見据えた機能性や拡張性、耐久性を兼ね備えたデザインです。
「長く愛されるデザイン」に丹青社はどのように取り組んでいくのか。その答えが「サステナブル設計ガイドライン」に集約されています。ガイドラインのとりまとめ役となった同社の善野英恵さん(ぜんのはなえ、以下、善野さん)に取材し、その背景や狙いを聞きました。

丹青社 善野英恵さん
マーケティング・サステナビリティセンター サステナビリティプロジェクト部
一級建築士、学芸員資格
全国の博物館や子供施設等の公共施設づくりや地域創生案件に従事。これまでの経験を活かして、現在は、多様性・地域・環境等をテーマとするサステナブルな空間づくりを実現するべく活動している
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目次
サーキュラーエコノミーを実現するための「Rラダー」「10R」「サーキュラーデザイン」
まず、おさらいとしてキーワードの意味を確認しておきましょう。
サーキュラーエコノミー(循環経済)
従来の「採掘→製造→利用→廃棄」という直線的な経済(リニアエコノミー)から脱却し、製品や資源の価値をできるだけ長く保ち、廃棄物の発生を最小限に抑えることを目指す経済システムです。資源を循環させ、環境負荷の低減と経済成長の両立を図ります。

Rラダー・10R
サーキュラーエコノミーを実現するための資源循環の優先順位を示す概念がRラダーです。Rから始まるアクションを階層的に並べたオランダ発祥のもので、資源循環の優先度が高い順に、Refuse(拒否)、Rethink(再考)、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Repair(修理)、Refurbish(修復)、Remanufacture(再製造)、Repurpose(転用)、Recycle(リサイクル)、Recover(熱回収)の10項目、すなわち10Rで構成されます。Rラダーは、Recycle(リサイクル)やRecover(熱回収)を最終手段と捉え、設計や計画の段階で、そもそも廃棄物を出さない、より上位のR(Refuse、Rethink、Reduceなど)を優先することを求めています。

サーキュラーデザイン
廃棄物が出ないように、最初から製品や仕組みを設計することです。「作って、使って、捨てる」一方通行(リニア)な設計ではなく、「資源がずっと循環し続ける」サーキュラーエコノミーを前提に、形、素材、組み立て方、そしてビジネスモデルまでを含めてデザインする手法を指します。Rラダー・10Rとの関係性において、サーキュラーデザインは全てのRを実現するための重要な役割を持っています。

丹青社が策定した「サステナブル設計ガイドライン」は、このサーキュラーデザインの考え方を設計思想の根幹の一つにすえ、日々の実務に落とし込むための実務指針です。
善野さん 「丹青社の『サステナブル設計ガイドライン』は、内装・ディスプレイ業として空間づくりに求められる広範な設計手法をまとめることを意図しました。サーキュラーデザインを含む8つの取り組みをテーマとしています。Rラダー・10Rとの関連ですと、サーキュラーデザインのテーマの中で最上流のReduce(削減)、中流のReuse(再利用)、下流のRecycle(リサイクル)について具体的に定めています」

丹青社が目指すサステナブル設計の根幹にある「3つの考え方」と「8つの設計手法」
「環境配慮設計」からの大幅アップデート:ガイドライン策定の背景
『サステナブル設計ガイドライン』が作られた背景と狙いを聞きました。
「2005年に定めた『環境配慮設計』という社内指針があります。時代に対応して少しずつアップデートしてきたのですが、昨今のサステナビリティの状況に照らすと不足する要素があったため、今回大幅に更新し『サステナブル設計ガイドライン』として整備しなおすことになりました」

300人弱のクリエイティブ職の知見を集約:実務指針化への道のり
丹青社のデザイナーやプランナー等のクリエイティブ職はデザインセンターという部署に所属しています。そこから様々な分野のベテランが集まり内容を煮詰めました。そのとりまとめ役、関連する調査、不足する部分の補いなどを一手に引き受けたのが善野さんです。
「もともとあった『環境配慮設計』で、業務に求められる対応はできていました。ただ、一口に空間づくりと言っても、丹青社の業務範囲は幅広く、扱う対象によって具体的な配慮が大きく異なります。また、丹青社には300人弱のクリエイティブ職がいますので、各自が様々な案件に取り組む中で、経験やノウハウの属人化が結果として生じてしまった状況もありました。デザインセンターの皆さんとも相談し、『サステナブル設計ガイドライン』の作成方針は、各分野の現場の知見を棚卸して、内部向けに実務的なことをまとめることとしました」
見本市の展示、博覧会のパビリオン、飲食や物販などの店舗、大型複合商業施設、オフィス、ホテル、医療施設、公共施設、博物館、企業ミュージアム、アミューズメント施設、テーマパーク、スポーツ施設等。その規模も性質も時間軸も全く異なる、様々な空間を手掛ける会社ならではの苦労ということでしょうか。
「丹青社の『サステナビリティ方針』では6つのマテリアリティ(重要課題)を定めています。人間の尊重、環境との共生、地域・社会の発展への貢献、イノベーションの推進、責任あるサプライチェーンの構築、コーポレートガバナンスの充実です。『サステナブル設計ガイドライン』もそれに紐づけたものとして考えました。マテリアリティから、空間設計に直結する『人間の尊重』『環境との共生』『地域・社会の発展への貢献』の3つを選定しました。それぞれについてサステナブル設計の視点で読み解き、現場の知見を集約していったのです」

マテリアリティと紐づく「3つの考え方」と「8つの設計手法」
3つのマテリアリティへの対応を、空間に実装するための具体的な設計手法に変換する必要があります。検討の結果、8つの設計手法として以下のようにまとめています。
「人間の尊重」
(1)ユニバーサルデザイン
(2)安全設計
(3)ウェルネスデザイン
「環境との共生」
(4)CO2排出量の削減
(5)地域環境への配慮
(6)サーキュラーデザイン
「地域・社会の発展への貢献」
(7)地域デザイン
(8)文化財の保存と活用
「この8つの設計手法は、『人間の尊重』から『地域・社会の発展への貢献』までを網羅する広範なテーマですが、特に『環境との共生』に属する(6)サーキュラーデザインを通じて、丹青社が重要視するReduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)という3Rを実務に落とし込むことを目指しています」

「8つの設計手法の具体的な内容についてはデザインセンターのベテランの皆さんに頼りました。そこに他の方の意見や最新の知見を合わせて練り上げていきました。また、経営企画の方ともすり合わせをして会社全体としての整合性も担保しています」
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Rラダーの上流、中流、下流それぞれで内装・ディスプレイ業にフィットさせた「サステナブル設計ガイドライン」
このようにして作られた『サステナブル設計ガイドライン』ですが、内装・ディスプレイ業として様々な空間づくりに関わる丹青社ならではの工夫や苦労がありました。
「理想とする状況や目的は明瞭に掲げながら、具体的な手法については当社の現状をふまえて、実際に取り組めて実現できることとしました。夢物語では現場が使えるガイドラインにはならず、サステナビリティに近づくことができません。3R(Reduce、Reuse、Recycle)というRラダーの基礎に集中したのもそのためです。そして、ゼネコンさんが手掛ける建築物とは異なり、内装やディスプレイという限定的な範囲でできることは何か、という観点も大事でした」

「扱う空間によって配慮すべき事項が大きく異なるのも当社ならではだと思います。現場に分散していた知見を集めて整理することで『そんな考え方もあるんだ!』『そんなやり方があるんだ!』と発見がたくさんありました。裏を返すと、この分野には合致するけど、あの分野には関係ないな、という設計手法もあるのです。とりまとめ役としては悩みましたが、特殊な回答を排除することはせず、当社の業務領域を網羅することを目指しました」
そして、請負業という業界の特性から、お客様との共通認識づくりが非常に重要です。たとえば、サステナブルな素材を選定するといっても、初期費用は通常品より割高になることが多いので、予算という条件をどう考えるかという課題はついてまわります。
「お客様も判断しにくい状況があると聞きます。当社のプランナーやデザイナーは、この空間で実現したいことはそもそも何か?を考え、そのために本当に必要なデザインを考え尽くします。考え尽くすための前提の一つがサステナビリティです。サステナブルな素材を選定することも手法の一つですが、その前段階、Reduce(削減)でできることも多いのです。たとえば、可動式や再配置可能な部材の採用により、将来的な廃棄・交換コストを大幅に抑えるなどの方法もあります。こうしたデザインでお客様の意思決定を支援したいと考えています」

持続可能な未来のための空間への投資:そのための「長く愛されるデザイン」
「このガイドラインによって、まず当社のデザイナーの視座を高め視野を広げ、お客様に提案するデザインによって双方の共通認識を磨いていく。そんな使われ方がされることを期待しています。当社一社だけでは実現が難しいことも多いのですが、諦めるのではなく『サステナブル設計』を提案し続け、皆さんと一歩ずつ進んでいくことを望んでいます」

丹青社社内においては、全社を対象として教育が既に終了し、デザインセンターではガイドラインをもとにしたチェックリストが作られ運用が始まっています。社内だけではなく、社外の1,000社を超えるパートナーを対象にしたガイドラインの説明も行われており、バリューチェーン全体でのサステナビリティ対応は継続的なものです。
「ガイドラインは定期的に見直しをかけて成長させていく予定です。今後は、デザインと制作の価値向上を担うバリュープロダクションセンターという部署が主幹することになります。全社で育てていくものだと思いますので、見直しには若手にも加わって欲しいですね」
「このガイドラインが、私たちだけでなく、パートナー様、そしてお客様にとっても持続可能な未来への共通言語となることを願っています。『長く愛されるデザイン』による空間づくりで、持続可能な社会の実現に貢献したいです」
▼関連・参考情報
丹青社 サステナビリティ方針
https://www.tanseisha.co.jp/sustainability
サステナブルイベント協議会
https://sustainableeventcouncil.jp/
イベント業界におけるサステナビリティ促進と、業界全体のリテラシー向上のために、丹青社、電通ライブ、乃村工藝社、博報堂プロダクツ、ムラヤマの5社で2023年に発足したもの
この記事を書いた人
山崎泰 / 丹青社「場と人」編集長・ジャーナリスト
丹青研究所で商業施設の調査・企画に携わった後、1997年に丹青社の社内新規事業「Japan Design Net(JDN)」創業に参加。メディア「JDN」「登竜門」の編集長、コンテスト制作の事業化を経て2011年にJDN取締役。2025年、丹青社に移籍。デザインに関する取材執筆多数。趣味はサックス演奏。
この記事を書いた人
山崎泰 / 丹青社「場と人」編集長・ジャーナリスト



