アップサイクルは企業の成長にも!基本情報とメリットデメリットを解説

サステナビリティ |

SDGsの社会への浸透が進む現在、持続可能な企業活動が求められるようになった結果として、アップサイクルが注目されています。取り組みが始まってからまだ日が浅く、これからアップサイクルを取り入れるという企業も多いですが、そのためには知識を深めることが重要です。

この記事では、アップサイクルの概要、メリットやデメリットを解説します。今後、アップサイクルに取り組む際の参考にしてください。

アップサイクルの基本情報

まずはアップサイクルの概要を把握しましょう。アップサイクルとは何か、またアップサイクルの簡単な歴史などを解説します。

アップサイクルとは

アップサイクルとは、廃物物の再利用において、廃棄されたままの形ではなく、商品としての価値を高めるような加工を行うことです。不要になった製品や素材にデザインやアイデアなどを加えて、価値の高い製品を生み出すことを指します。

アップサイクルを行うことで、製品としての魅力を高めつつ、製品の寿命を延ばすことが可能です。ものを新しくつくるとコストがかかり、エネルギーも必要ですが、アップサイクルは元の製品の形を活かすことによって、消費するエネルギーやコストを抑えられる方法であるといえます。

アップサイクルの歩み

アップサイクルという言葉は、ドイツの実業家レイナー・ピルツ氏が提唱した概念です。1994年10月、アップサイクルとダウンサイクルについて語った記事が残されており、これがアップサイクルに関する最も古い文献と考えられています。

とはいえ、アップサイクルという言葉はなくとも、アップサイクルに該当する行為自体は、日本のみならず多くの国や社会で古くから行われてきたものです。しかし、産業革命以降は、効率性と大量生産が追求され、結果的に使い捨ての文化が定着するに至りました。

近年は、地球規模での環境の変化が体感されるようになったことを受けて、持続可能な社会を目指すための循環型経済が着目されています。アップサイクルの概念は、こうした社会情勢のなかで見直され、注目されています。

反対語はダウンサイクル

アップサイクルの反対語は、ダウンサイクルといいます。ダウンサイクルは、アップサイクルとは真逆の意味で、製品の価値を下げるリサイクルのことです。たとえば、シャツを雑巾にしたり、古着を再生紙にしたりするのは、結局はゴミとなってしまうため持続性も継続性もなく、ダウンサイクルに該当します。

アップサイクルの類義語とその違い

アップサイクルにはいくつか類義語もありますが、いずれも全く同じ意味合いではありません。アップサイクルの類義語や意味を解説します。

アップサイクルとリサイクル

リサイクルとは、ある製品を砕いたり、化学的処理を行ったりして原料の状態にまで戻し、それを新たな製品へと生まれ変わらせることです。一方、アップサイクルでは製品に過度な手間をかけたり、原料に戻したりせずに次の製品へと利用します。

たとえば、不要な洋服をアップサイクルするとき、布地や服の形状をそのまま利用しながら、バッグやポーチを作成する方法があります。一方、リサイクルをするときは繊維の状態にまで戻し、それを原材料にして新たな衣類を作成しなければなりません。

リサイクルでは、原料に戻す作業によって新たなコストや環境負荷が発生します。アップサイクルはその工程がない、サステナブルな資源活用の方法です。

アップサイクルとリユース

リユースとは、元々の製品をそのままの形で再利用することです。一方、アップサイクルは製品を加工するため、付加価値をつけられます。

例えば、ビールの空き瓶をアップサイクルする場合、削るなどの加工を施してグラスを作成することも可能です。ビールの空き瓶をリユースしたいときは、加工をせず、そのままの形で花瓶として使う方法などが考えられます。リユースでは、製品自体の寿命を延ばすことはできません。アップサイクルをすれば、製品の寿命を延ばすことも可能です。

アップサイクルとリメイク

アップサイクルとリメイクは、不要品に手を加えるという点で似ています。アップサイクルとリメイクの分かれ道は、価値が上がるかどうかです。

リメイクは、元の製品の素材を生かしてつくり変えます。リメイクの方法によっては、製品としての価値が下がる場合も少なくありません。アップサイクルは、用途や見た目を以前の製品と異なる状態にまでつくり変え、新たな価値を与えます。

アップサイクルとSDGsの関連性

SDGsの17の目標のうち、アップサイクルと関わりが強いのが目標12の「つくる責任 つかう責任」です。SDGsの目標を実現するためには、これまでの大量消費・大量廃棄を中心とした社会の構造を変え、持続可能な生産消費の流れを確保しなければなりません。

SDGsはあくまでも目標であり、達成方法について具体的に示されているわけではないものの、持続可能な社会のためには企業の貢献も期待されています。「つくる責任」の大きなウエイトが企業側にあることを考えると、企業がアップサイクルに取り組むことは重要といえるでしょう。

アップサイクルが企業にもたらすメリット

アップサイクルは企業にとってもメリットのある概念です。アップサイクルが企業にもたらすメリットを解説します。

コストを削減できる

アップサイクルによって、企業はコスト削減を実現できる可能性があります。アップサイクルは、これまで多く行われてきたリサイクルと違い、製品を原料に戻すためのコストがかかりません。

また、不要になった旧商品を代替原材料として活用することで、原材料の仕入れコストも削減可能です。つまり、アップサイクルへの取り組みで再利用のコストを多方面から抑えられます。

企業のPR効果がある

企業がアップサイクルを積極的に実施すると、消費者や投資家の目に触れやすく、社会的な評価を高められます。現在、世情や市場は、企業に対して持続可能な経済成長を目指す経営を強く求めています。

アップサイクルによって生み出されるものは、こうした世情・市場の要求を満たしている製品です。環境負荷を考慮し、持続可能なものづくりを行っていることの表れとして、アップサイクルの取り組みを進めてみるとよいでしょう。

アップサイクルの課題点(デメリット)

メリットの多いアップサイクルにも、デメリットがあります。ここでは、アップサイクルのデメリットを解説します。

原材料の安定供給に不安がある

アップサイクルでは、廃棄や不要になったものを材料として扱うため、原材料が安定的に供給されない可能性があります。生産するためには廃棄されるものを待つ形となるため、生産や製造を行う側は、必要なときに必要なものがあるという状況になりにくいのが難点です。

原材料の安定した確保が難しければ、大量生産はできません。大量生産ができなければ、コストパフォーマンスが悪くなり、販売面にも影響が出る可能性が高いでしょう。原材料の供給が不安定でも成り立つだけの付加価値をつけるなど、工夫が必要です。

廃棄が常態化するかもしれない

アップサイクルが定着することは、廃棄の常態化につながる可能性も秘めています。アップサイクルという概念を取り入れることで「他のものに生まれ変わるなら、ごみを出しても別によい」という捉え方をする人も出てくる可能性があるためです。

SDGsの観点からすれば、いかに手を加え、生まれ変わるとはいっても、そもそも廃棄物が出ない方が望ましいでしょう。勘違いを生まないためにも、アップサイクルとSDGsはセットで浸透させなければなりません。

企業におけるアップサイクルの今後の展開

企業において、アップサイクルはますます必要な概念となってくることでしょう。企業が新たな発想をもってアップサイクルに取り組むことで、価値のアップグレードだけではない成果を得られる可能性があります。

たとえば、他業界への進出や他業界とのパートナーシップなど、企業の成長戦略としてもアップサイクルは役立つでしょう。新しい技術でアップサイクルに取り組む企業も増えています。さらに現在では、アップサイクルのサポートを、ビジネスとして展開する企業も本格的に稼働している状況です。

業界を超えて素材の価値を最大化できれば、これまでのアップサイクルを上回る製品をつくれる可能性もあるでしょう。

まとめ

アップサイクルはSDGsの方針に則した環境保護の1つです。従来のリサイクルに比べてもコストをカットでき、環境負荷も軽いため、注目度が高まっています。今後の社会の在り方において、他業界、他業種との協業も視野に入れてアップサイクルを実現していくことが、企業の成長の鍵になる可能性もあるでしょう。

企業として自社の考え方を内外にアピールする方法として、オフィスや店舗、イベント会場などの空間デザインがあります。環境負荷を考慮した美しい空間づくりを目指すなら、多様な施設の調査・企画・設計・施工・運営管理まで、幅広い分野で総合的な事業展開を行う株式会社丹青社へご相談ください。さまざまな課題解決のお手伝いをいたします。

この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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