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愛される沿線へ|まちの顔になる鉄道車両のデザイン
まちづくり |
近年、鉄道事業は、単なる移動手段を提供するだけでなく、お客様に「特別な体験」を提供し、沿線地域の活性化にも貢献する存在へと進化が求められています。特に、車両デザインや車内空間の演出は、沿線のブランド価値を高める重要な要素となっています。
ここでは、沿線に愛される車両デザインの事例とトレンドを紹介します。
目次
1. 万博アクセスルートを「パレード」に変える、非日常の没入型演出(西日本旅客鉄道 / JR WEST Parade Train)
西日本旅客鉄道では、大阪・関西万博を盛上げるため、また、万博アクセスルートをパビリオンのように楽しんでいただくための新たな価値創造への挑戦として、「JR WEST Parade Train」を運行し、車内空間での没入感のある映像演出を実装しています。
この車両では、車内の上部を中心にLEDパネルを客室全長にわたって設置。外の景色をリアルタイムに投影したAR(Augmented Reality 拡張現実)の表示と連動し、区間ごとに大阪をモチーフにしたキャラクターや花火などのエフェクトが演出されます。まるでパレードに包まれるオープンカーに乗っているかのような賑やかな車内空間は、「EXPO 2025 Design System」のストーリーに沿った演出で、万博への期待感を高めています。外観も、パレードに参加するわくわく感を表現したラッピングで彩られています。

丹青社がデザインに携わったこのプロジェクトは、「DIGITAL SIGNAGE AWARD 2025」においてグランプリを受賞しました。車内の演出は以下のページで動画がご覧いただけます。
「DIGITAL SIGNAGE AWARD 2025」グランプリを受賞しました | 2025年 | お知らせ | 株式会社丹青社
2. お客様の声を聞き、車窓の景色を「豊かな体験」に変える新型車両(江ノ島電鉄 / 新型車両「700形」)
江ノ島電鉄では、2026年導入予定の新型車両「700形」に、窓からの景色を色鮮やかに美しく見せる特徴をもつフィルム「ポジカ®くっきり™フィルム」の採用を決定しました。
新型車両は、「日常から非日常まで想いを紡ぐENODEN」をコンセプトに掲げ、沿線に暮らす人々と、観光などで訪れる人々、双方の想いやときめきを紡ぐ、明るく未来志向の車両を目指しています。
このフィルムの採用にあたり、江ノ島電鉄では2024年8月より既存車両で試験運行を実施。お客様の声を直接聞くためのアンケートを行いました。300名を超える回答者の86.7%が「フィルムを貼った窓からの景色の方がきれいに見える」と回答。この取り組みは、観光客だけでなく、日ごろから江ノ電を利用されている沿線住民の皆様からも高い関心と評価を得ています。
世界を美しく変えるウインドウフィルム「ポジカ®くっきり™フィルム」
3. 既存車両のリニューアルでブランドイメージを強化する(東急電鉄 / 目黒線・東横線・田園都市線 車両リニューアル)
東急電鉄では、導入から約20年が経過した、目黒線・東横線・田園都市線の車両において、エクステリア・インテリアデザインを一新するリニューアルを計画しています。
今回のリニューアルでは、エクステリアデザインを東急電鉄の従業員から公募するという試みが実施され、駅や沿線のお客様に笑顔を届けるデザインが採用されました。2018年導入の車両「2020系」で確立されたコンセプトカラー「INCUBATION WHITE(美しい時代へ孵化する色)」を基調とし、各路線のカラーをイメージしたグラデーションのラインを取り入れることで、東急電鉄のブランドイメージを統一し、洗練された印象を与えます。
東急田園都市線 新型車両「2020系」 | 実績紹介 | 株式会社丹青社
まとめ
鉄道車両のデザインには、単に機能性や安全性だけでなく、その鉄道が走る沿線に溶け込み、地域住民や観光客に深く愛される存在となることも重要な要素です。デザインの力で移動体験を豊かにし、地域との絆を深めることが、未来の鉄道の価値を創造する鍵となるでしょう。
この記事を書いた人

株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

この記事を書いた人
株式会社丹青社