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クリニックにおける動線設計のポイントをエリア別に解説
ウェルネス |
クリニックの動線は、そこで働く従業員だけではなく、患者にとってもわかりやすく動きやすい経路であることが重要です。
この記事では、動線の基本的な情報や、設計するうえで注意すべきポイントについても解説しています。理想的なクリニックの空間づくりの参考にしてみてください。
目次
クリニックにおける動線・裏動線
クリニックにて動線設計を行う際、気を付けなければならないのは「動線」と「裏動線」です。
動線とは、患者が移動するときに使用する経路のことを指します。受付や待合室、診察室、トイレなど、患者がクリニックを訪れてから帰るまでの間で通る通路です。一方、裏動線とは、従業員や機材が業務のために移動する際に使用する経路のことを指します。診察室や検査室、バックヤードなどの行き来の際に通る場所です。
動線と裏動線を意識して設計しなければ、従業員同士が衝突したり、患者が迷ったりする可能性があります。動線のわかりやすさはクリニックの満足度に直接つながることもあるため、利用しやすい動線設計を心がけましょう。
クリニックの動線の分け方
クリニックにおいて動線を分ける方法は2種類あります。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
動線分離タイプ
動線分離タイプとは、クリニック内の動線を患者と従業員で分離することです。クリニック内の通路を、患者用と従業員用に2つ設計します。
動線分離タイプでは、診察室が完全個室になる場合が多いため、診察時に患者のプライバシーを確保しやすい点がメリットとして挙げられます。また、人同士の接触を最小限に抑えられるため、感染リスクも軽減できるでしょう。
従業員動線には医療機材を用意しておけるため、処置や検査が必要になった場合でも患者を待たせずに準備ができます。
ただし、クリニック内に患者用と従業員用の通路を確保する必要があるため、費用が高くなる点はデメリットです。
セミオープンタイプ
セミオープンタイプは、診察室をカーテンやパーテーションなどで、簡易的に分離するタイプです。動線自体を患者と従業員で分離する訳ではなく、同じ通路を使用します。
セミオープンタイプの場合、簡易的に空間が分けてあるだけなので、何かあれば患者のもとに従業員が駆けつけやすいというメリットがあります。患者に異変があった際も従業員が気が付きやすいため、患者にとっても安心感が得られるでしょう。また、カーテンやパーテーションを設置して区切るタイプなので、設置費用を抑えられます。
しかし簡易的な区切りであるため、診察中の患者の声が外にも聞こえてしまうことにより、プライバシーの保護がしにくいという点がデメリットとして挙げられます。
クリニックにおける動線設計の注意点
クリニックで動線設計を行う際に知っておきたい注意点について解説します。防音対策の重要性についても説明するので、動線設計で気を付けるポイントを押さえておきましょう。
動線(患者が通る動線)
患者が利用する動線を設計する際は、患者の利便性を意識する必要があります。
車椅子の人や妊婦、高齢者など、クリニックにはさまざまな状況や事情を抱えた患者が来院します。自分の足で不自由なく歩ける人に対してももちろんですが、歩行が困難な患者にとっても利用しやすい動線設計にしておきましょう。
初めての来院でもわかりやすく設計することで、患者が迷いにくく、従業員が行き先を案内する手間から解放されます。経路の複雑さを解消することは、患者の移動距離を短縮することにもつながります。
また、通路の幅も考慮すべきポイントです。通路ですれ違う際に、ぶつかったり近すぎたりするとストレスにつながるうえ、歩行が困難な人にとっても不便だといえるでしょう。有効寸法で1,200mmを確保するのが基本的な幅だとされています。
裏動線(従業員が通る動線)
従業員が利用する裏動線を設計する場合は、無駄な動きを減らせる動線になるよう心がけましょう。効率的に業務に取り組むなかで、行ったり来たりを繰り返す配置は作業効率低下につながります。
また、動線上で患者と従業員が接触する場所を最小限に抑えることも重要です。接触する場所が多いと、必要以上に患者の対応に追われることになってしまいます。本来の業務に支障が出る可能性もあるでしょう。
さらに、倉庫やバックヤードの空間は十分に広さを確保しておくとよいでしょう。収納が不十分だと備品が通路に溢れてしまったり、機材の移動がしにくくなったりするおそれがあります。従業員目線で設計を組むことも意識してください。
動線・裏動線の防音対策
従業員のみが使用する裏動線を設計しておくことは、患者とクリニックの関係性を良好に保つためにも重要です。また、動線と裏動線への防音対策には気を配りましょう。院内の動線設計や防音対策が不十分な場合、診察中の会話や従業員同士の会話が患者のいるスペースまで漏れてしまい、患者に不信感を与えかねません。
有効な防音対策としては、可能な限り隙間をなくすことが挙げられます。ほかにも壁・天井の下地に遮音性能の高い材料を選び使用することも防音対策として有効です。クリニックの信頼につながるため、防音対策はきちんと行いましょう。
クリニックの動線設計の場所別ポイント
患者が来院してから退出するまでの動線設計のポイントを、場所別に解説します。
駐車場・出入口
患者がクリニックを訪れた際、どこに入り口があるのか一目でわかる設計にすることが大切です。体調がすぐれない人や運転が得意でない人でも見つけやすく、出入りしやすい設計を心がけましょう。また、駐車場には、雨の日を想定して屋根を付けることも有効です。
見つけやすい出入口が大切である一方で、「クリニックに入る姿を見られたくない」という患者もいます。そのような思いも考慮して、アプローチや風除室の配置に工夫を施すことで、クリニックへの入り口を見つけやすくしつつ患者のプライバシーにも配慮できます。
受付・待合室
待合室では、受付との位置関係に気を付けて設計を行う必要があります。
受付の真正面に患者が座って待つような設計にしてしまうと、従業員も患者も互いに見られているようで落ち着かない状況になってしまいます。そのため、従業員と患者の位置関係は、顔は見えるけれど視線は合わない配置が理想です。受付の従業員から待合室が見渡せるようにすると、待合室で何か起きた際も患者の状態を把握しやすくなります。
また、会計からクリニックを出るまでの流れがスムーズになるよう考慮した動線設計もよいでしょう。会計場所の受付前に荷物台を設置すると、財布や薬をその場でしまえるため待合室でもたつきません。さらに、会計中の患者に注目を集めないように配慮した配置だと、患者も安心して利用できるクリニックとなります。
診察室・検査室・処置室
診察室や検査室、処置室には、防音対策を施しておくことで、患者のプライバシーを保護できます。
受診するクリニックの標榜科に関わらず、症状について話す声が外に漏れるのが嫌だと感じる患者も多いため、隙間を極力なくしたり、遮音性能の高い材料を壁や天井に使用したりして対策を行いましょう。
扉も防音効果のあるものを使用することで、さらに高い防音効果を期待できるため、患者の目線に立って防音対策について検討してみてください。
まとめ
クリニックの動線設計は、動線・裏動線を考慮する必要があります。従業員と患者の行き来をスムーズにするためにも、接触する回数を最小限に抑えられる動線設計を心がけてください。
クリニックの動線設計にお悩みであれば、丹青社にご相談ください。さまざまな施設の調査・企画・設計・施工・運営管理など、幅広い分野の動線やレイアウトづくりに携わった経験があります。文化施設業界においても、専門のシンクタンクを備えており業界No.1のシェアを誇っています。理想的なクリニックの動線設計にするためにも、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。
この記事を書いた人
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