調剤薬局のレイアウトにおけるポイントは?注意点や遵守が必要な法律も解説

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調剤薬局のレイアウトは、法律による制限や規制を遵守しなければなりません。そのうえで、患者が快適に利用できたり、スタッフの業務効率を下げないレイアウトが求められます。この記事では、調剤薬局のレイアウトについて解説します。調剤薬局の各スペースにおけるポイントや、調剤薬局のレイアウトにおける注意点についても解説するので、参考にしてください。

調剤薬局のレイアウトにおける制限

調剤薬局のレイアウトにはさまざまな制限があります。以下は、広さと内装における具体的な制限です。

広さ

薬局等構造設備規則により、調剤薬局に必要な最低限の広さが定められています。対象となる場所と広さの基準は以下のとおりです。

対象広さの基準
調剤薬局全体19.8平方メートル以上
調剤室6.6平方メートル以上

なお、それぞれの広さの基準は最低限のものであり、実際には業務を適切に遂行できる広さが求められます。

参考:薬局等構造設備規則

内装

調剤薬局の内装も薬局等構造設備規則により一定の制限があります。内装制限の詳細は以下のとおりです。

・薬局の内装は概ね19.8平方メートル(5.99坪)以上であること
・天井及び床は板張り、コンクリート、またはこれらに準ずるものであること
・調剤業務従事者以外が侵入できないような措置が取られていること
・鍵のかかる貯蔵設備を有すること
・交付する場所の照明は60lux(ルクス)以上、調剤台の上は120lux以上の明るさを有すること
・換気が十分であり、かつ清潔であること
・医薬品は通常陳列とすること

参考:薬局等構造設備規則

調剤薬局のレイアウトにおけるポイント

調剤薬局のレイアウトにおけるポイントは多岐に渡ります。以下は、具体的なポイントとそれぞれの詳細です。

コンセプトを意識する

あらかじめコンセプトを決めておかないと、一貫性のあるレイアウトにおける意思決定が難しくなります。レイアウトは店舗内全体の雰囲気に影響を及ぼすほか、適切なサービス提供にも関わるため重要です。

たとえば、温かな雰囲気で親切な接客を目指す場合は、待合室にぬくもりを感じられる木材を取り入れているところもあります。また、ゆったりくつろげるソファを配置することも1つの方法です。

動線を設計する

動線は顧客満足度や従業員の業務効率に影響するため、適切な動線設計を意識しましょう。具体的には、顧客と従業員の動線を分けたり、従業員の作業動線を短くして効率的な作業を可能にしたりするなどです。また、薬局の利用者には車椅子を使用している人や乳幼児も多くいます。通路やスロープ、トイレなどの位置関係にも注意しましょう。

プライバシーに配慮する

プライバシーに配慮することも、調剤薬局のレイアウトにおけるポイントの1つです。なぜなら、薬剤の提供や薬に関するカウンセリングには、他の人に聞かれたくない内容も少なくないからです。対策として、別途カウンセリング室を設置したり、待合室から離れた場所に調剤の提供場所を設置したりするなどが挙げられます。

バリアフリー設計を取り入れる

薬局にはさまざまな人が訪れます。たとえば、ベビーカーを使っている人や車椅子利用者のほか、足腰が悪い高齢者なども多く利用するでしょう。そのため、多くの人が利用しやすい調剤薬局にするためには、バリアフリー設計にすることが望ましいといえます。段差をなくしてスロープにしたり、各所に手すりを設置したりしましょう。

適切な設備を用意する

薬局のサービス内容に応じて、適切な設備を用意できるレイアウトにしましょう。調剤薬局に必要な設備は主に以下のとおりです。

・受付
・待合室
・調合室
・事務室
・休憩室
・トイレ

なお、受付や事務室などは、顧客情報の漏洩を防止できるようなレイアウトにしなければなりません。設置する場所や動線にも配慮が必要です。

調剤薬局の各スペースにおけるポイント

調剤薬局の各スペースでは、いくつか意識するべきポイントがあります。ここからは、各スペースそれぞれのポイントについて解説します。

受付

受付は人が集まりやすい場所のため、動線を意識したレイアウトを心掛けましょう。たとえば、待合室を経由しない場所にして人の行き来を減らしたり、通路を広めにとって車椅子の人でも利用を容易にしたりするなどの工夫が必要です。

また、出入り口の近くに受付を設けると、利用者がスムーズに移動しやすいでしょう。スペースに余裕があれば長めの受付カウンターにして、レジを複数設置すると混雑を防止できます。

待合室

調剤薬局では、実際に薬を用意して渡すまでに時間がかかる場合も少なくありません。そのため、患者が待ち時間を快適に過ごせるように対策をすると効果的です。たとえば、座りながら楽しめるテレビや雑誌を設置する方法があります。さらに、周囲に商品棚を設置したり、健康に関するコラムを壁に掲載したりしてもよいでしょう。

また、簡易的なキッズスペースを設置したり、おもちゃや絵本などを置いたりすると、子ども連れの患者も来やすくなります。

調剤室

調剤室の広さは法律で定められており、6.6平方メートル以上の面積を確保しなければなりません。また、市区町村によっては、追加の対応が求められます。たとえば、出入口を引き戸や開き戸にしたり、ほかの場所から隔離するために明確な仕切りを用意したりするなどです。

参考:薬局等構造設備規則

事務所・更衣室

自治体にもよりますが、基本的に薬局には事務室と更衣室の設置が必須となっています。また、自治体による指定がない場合でも、従業員が働きやすい環境を作るために、事務所・更衣室を設置することが望ましいでしょう。

参考:薬局等構造設備規則

調剤薬局のレイアウトにおける注意点

調剤薬局のレイアウトにおける注意点について解説します。具体的な注意点と、それぞれの詳細は下記のとおりです。

法令と規制を遵守する

調剤薬局には、さまざまな遵守するべき法令や規制が存在します。そのため、デザイン性や機能性を優先して、法令や規制を違反しないように注意しましょう。

たとえば、調剤室は面積が6.6平方メートル以上かつ、待合室から調剤室内を見通せるレイアウトである必要があります。法令や規制を違反してしまうと、罰則が与えられる可能性もあります。レイアウトを決める際は、法令や規則を確認したうえで進めましょう。

衛生管理を徹底する

調剤薬局では、薬品の品質への影響を抑えたり、患者の安全・健康を守ったりするためにも、衛生管理を徹底することが求められます。調剤作業や薬剤の保管は、必ず衛生基準を遵守しましょう。また、定期的に清掃や消毒を実施して、清潔な状態を保つことも重要です。スタッフ全員が衛生管理を徹底する意識を持って、業務に取り組むようにしましょう。

セキュリティを確保する

薬局内には、患者の個人情報や医療情報といった重要な情報が保管されています。そのため、重要な情報が漏洩しないように、セキュリティ対策が求められます。たとえば、調剤室や事務室への侵入を防ぐために、鍵の管理場所や出入り口の防犯性などを考慮することが重要です。

また、2023年4月からオンライン資格確認の導入が義務化されました。物理的なセキュリティのみならず、サイバーセキュリティー対策も実施しましょう。

室内環境へ配慮する

患者やスタッフが快適に過ごすために、室内環境への配慮は大切です。適切な換気設備を備えて、快適な室温と湿度を保つようにしましょう。備えるべき換気設備として、換気扇やエアコン、空気清浄機などが挙げられます。また、騒音を制御できるレイアウトにすることも、快適な室内環境の実現に繋がります。

まとめ

調剤薬局のレイアウトは、法律による制限や規制を遵守する必要があります。そのうえで、利用者が快適に過ごせるような内装を心掛けることが望ましいでしょう。

丹青社は、多様な施設の調査・企画・設計・施工・運営管理に至る幅広い分野で事業展開しています。文化施設事業では専門のシンクタンクを備え、業界No.1のシェアを誇ります。空間づくりに課題を感じている場合は、ぜひ丹青社へご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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