クリエイティブオフィスとは|導入メリット・空間づくりのポイント・成功事例など

ワークプレイス |

イノベーションを重視する企業やコミュニケーションを活性化させたい企業などでは、オフィスづくりの一環として、「クリエイティブオフィス」という考え方を採用しています。しかし、クリエイティブオフィスの概念はまだ新しく、浸透していないのが現状です。

この記事では、クリエイティブオフィスの定義や注目される背景、メリット、空間づくりのポイント、企業の成功事例などを解説します。ぜひ、参考にしてください。

クリエイティブオフィスの定義

クリエイティブオフィスとは、創造性を掻き立てる工夫が施されているオフィスのことです。単におしゃれを追求するのではなく、業務や事業展開に貢献するオフィスデザインを目指して、戦略的な仕組みを取り入れています。

国内企業の経済発展を図るために経済産業省からも導入が推進されており、企業の創造する力を遺憾なく発揮できる環境づくりの一環として、多くの企業から注目されるようになりました。

クリエイティブオフィスが注目される背景

2007年に物づくりの価値軸として経済産業省が提案した、「感性価値創造イニシアティブ」によって、クリエイティブオフィスという考え方が広まりました。

急速なIT化によって、企業を取り囲む環境は大きく変化しています。そんななか、日本企業が世界的にも競争力を維持・向上させるためには、感性価値を重視した空間づくりも必要とされています。

クリエイティブオフィスを導入するメリット

従来のオフィスに対する価値観を一新させ、クリエイティブオフィスを導入するのには、以下のようなメリットがあります。

創造性が高まる

クリエイティブオフィスでは、創造性を高めるためにさまざまな工夫が盛り込まれているため、創造力の向上が期待でき、新しいアイデアの創出が促進されるでしょう。

たとえば、いつも同じ席で業務をこなすのではなく、フリーアドレス制などを取り入れて日々新しい環境で働けるようにすると、新しい発想が生まれやすくなる可能性があります。

コミュニケーションが活性化される

クリエイティブオフィス内では、社内コミュニケーションを活性化するというメリットもあります。

たとえば、先述したフリーアドレス制では、部署に捕らわれない交流が期待できます。さらに、社外からの参加も可能なミーティングやWeb会議システムを活用すれば、コミュニケーション希薄になりがちなテレワーク勤務の従業員とも交流の機会を持てるようになるでしょう。

従業員のモチベーションが高まる

クリエイティブオフィスで働く従業員は、モチベーションが高まりやすくなる傾向にあります。業務に対するモチベーションが上がれば、生産性の向上も期待できます。

たとえば、業務進捗や成果を見える化したクリエイティブオフィスでは、従業員の競争心を煽って成長を促したり、達成感の向上につながったりするでしょう。

業務が効率化される

クリエイティブオフィスを導入すると、従業員同士がサポートし合い、迅速に対応できる環境が整うため、業務の効率化が期待できます。

たとえば、オープンスペースのなかに気軽に使えるミーティングブースを設置しておくと、予約しなくても必要なタイミングで打ち合わせを始められます。業務がスムーズに進められる環境は、創造性の増幅にも寄与するでしょう。

クリエイティブオフィスに求められる「12の知識創造行動」を促進する空間づくり

クリエイティブオフィスには、「12の知識創造行動」を基にした空間づくりが求められます。

「12の知識創造行動」とは、知識共有や新たな創造が生まれる際の行動を4区分12行動に分けたSECIモデルで定義される考え方です。

SECIモデルの区分区分ごとの行動
Socialization:共同化1. フラフラ歩く
2. 接する
3. 見る、見られる、感じ合う
Externalization:表出化4. 軽く話す
5. ワイガヤ、ブレストする
6. 絵にする、たとえる
Combination:連結化7. 調査、分析、編集、蓄積する
8. 真剣に討議する
9. 診てもらう、聴いてもらう
Internalization:内面化10. 試す
11. 実践する
12. 理解を深める

SECIモデルを基にした空間づくりについて、以下で詳しく解説します。

Socialization(共同化)を促進する空間づくり

ここでは、Socialization(共同化)について解説します。

▼Socialization(共同化)の行動

「Socialization=共同化」に分類される行動には、以下の3つが挙げられます。
フラフラ歩く:オフィス内を自由に行き来する
接する:偶然の出会いや会話を楽しみ、知識や感情を共有する
見る、見られる、感じ合う:製造現場や他の部署などの様子を観察しながら、インスピレーションを得る

▼クリエイティブオフィスの施策例

Socializationを意識したクリエイティブオフィスには、以下のような例があります。
ジグザグした通路の設計:従業員が自由に歩き回り、偶然の会話が生まれるレイアウトを設計する
ラウンジスペースの設置:雑談しやすく、打ち解けやすいリラックス空間を提供する
ガラス張りの壁の採用:オフィス内や製造現場の様子が見渡せるデザインで情報共有を促進する

Externalization(表出化)を促進する空間づくり

ここでは、Externalization(表出化)について解説します。

▼Externalization(表出化)の行動

「Externalization=表出化」に分類される行動には、以下の3つが挙げられます。
軽く話す:短時間の会話のなかで、気軽にアイデアを共有する
ワイガヤ、ブレストする:ブレインストーミングを行い、自由に意見交換する
絵にする、たとえる:アイデアを図や絵で表現し、他者と共有する

▼クリエイティブオフィスの施策例

Externalizationを意識したクリエイティブオフィスには、以下のような例があります。
ソファエリアの設置:気軽に話せる小さなテーブルやソファを配置する
ブレインストーミングルームの設計:可動式テーブルとホワイトボードを備えた議論スペースを提供する
ホワイトボードの配置:自由に使えるホワイトボードを設置する

Combination(連結化)を促進する空間づくり

ここでは、Combination(連結化)について解説します。

▼Combination(連結化)の行動

「Combination=連結化」に分類される行動には、以下の3つが挙げられます。
調査、分析、編集、蓄積する:既存の情報やデータを調査し、分析して新しい知識を創出する
真剣に討議する:集中して議論し、さまざまなアイデアを取り入れる
診てもらう、聴いてもらう:プレゼンテーションやディスカッションで評価してもらう

▼クリエイティブオフィスの施策例

Combinationを意識したクリエイティブオフィスには、以下のような例があります。
集中作業ブースの設置:集中しやすい静かな空間を提供する
閉鎖的な会議室の配置:ディスカッションに使える防音空間を用意する
プレゼンテーションルームの設計:プロジェクターやスクリーンを備えたプレゼンテーションルームを提供する

Internalization(内面化)を促進する空間づくり

ここでは、Internalization(内面化)について解説します。

▼Internalization(内面化)の行動

「Internalization=内面化」に分類される行動には、以下の3つが挙げられます。
試す:新しい知識やアイデアを用いて、試作や実験をしてみる
実践する:学んだ知識や新しいアイデアを現場で活用してみる
理解を深める:知識やアイデアを自分のものとして取り込む

▼クリエイティブオフィスの施策例

Internalizationを意識したクリエイティブオフィスには、以下のような例があります。
試作スペースの設置:工具や実験機器を備えたスペースを提供し、試行錯誤の場を整える
商談スペースの配置:顧客との対話や実演ができる場所を設ける
研修室の設計:ビデオ学習やワークショップが行える学習空間を用意する

クリエイティブオフィスを成功させるポイント

クリエイティブオフィスの導入によって効果を得るには、以下の3つのポイントを押さえることが大事です。

クリエイティブな空間設計

創造性の向上に寄与するクリエイティブオフィスの実現には、新しい働き方を実現できる空間設計が必要です。先述したSECIモデルを取り入れ、社内ニーズに合うオフィス空間づくりを意識しましょう。

また、オフィスデザインの効果を高めるには知識と経験が求められるため、実績のある専門会社に相談するのも手です。

ICTの導入・活用

クリエイティブオフィスの効果を最大限に引き出すためには、ICTツールの導入・活用が重要なポイントです。テレワークなどのオフィス外で業務する機会が増えているなか、迅速で効率的な情報共有とコミュニケーションを実現するには、ICTツールの活用が欠かせません。ICTツールは、円滑なコミュニケーションや業務効率化にも役立ちます。

従業員の意識改革

クリエイティブオフィスを効果的に活用してもらうためには、オフィス設計の意図や目的を共有しておく必要があります。

全労働者向けの社内研修や説明会を開催し、クリエイティブオフィスを取り入れると得られる効果や、先述した「12の知識創造行動」を理解してもらっておくと、より効果を得られやすくなるでしょう。

まとめ

社会的ニーズの移り変わりが激しい昨今では、クリエイティブオフィス導入によって、創造性を高めるのも課題解決方法の1つとして注目されています。その効果を最大限活かすためには、戦略的な工夫を盛り込んだオフィス設計や、社内周知の徹底が必要です。

社内だけでクリエイティブオフィスを導入するのに不安がある場合は、オフィス設計に強い会社にサポートを依頼するといいでしょう。丹青社は、多様な施設の調査・企画・設計・施工・運営管理に関わってきた、オフィス空間づくりの専門会社です。

経営課題解決につながる空間づくりがしたいという企業担当者は、ぜひ一度お問い合わせください。


この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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