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オフィスの通路幅の目安は?適正に保つメリットや関連する法的要件を解説
ワークプレイス |
オフィスレイアウトを検討するうえで、通路幅をどの程度確保したらよいか悩む人もいるでしょう。オフィスの通路幅は、働きやすさや緊急時の安全性に大きな影響を及ぼします。レイアウト変更を機に、適切な通路幅を確保することで、より働きやすい職場環境を構築しましょう。
この記事では、オフィスの通路幅について、場所ごとの目安や、適切な幅を保つメリット、関連する法的要件などを解説します。ぜひ参考にしてください。
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目次
オフィスの通路幅の参考になる人や車椅子の寸法

オフィスの通路幅を検討するとき、オフィス内を通行する人や車椅子の寸法が基準となります。参考になる人や車椅子の寸法は、概ね以下のとおりです。
- 1人が通行する際に必要な通路幅:60cm程度
- 1人が横向きになって通行する際に必要な通路幅:45cm程度
- 2人がすれ違う際に必要な通路幅:120cm程度
- デスクの奥行き:70cm程度
- デスクの幅:120cm程度
- 座ったときに生じる奥行き:50cm程度
- 椅子から立ち上がる際に生じる奥行き:70cm程度
- 車椅子が通行する際に必要な通路幅:80cm程度
上記寸法を目安として、以降ではオフィスの通路幅について解説します。
オフィスの通路幅の目安

オフィスの通路幅は場所や用途によって適切な寸法が異なります。ここでは、主な通路のパターンごとに適切な幅の目安を紹介します。
座席と壁間の通路(通り抜けなし)
座席から立ち上がる際のスペースとして、少なくとも、90cm程度の通路幅が求められます。90cm程度の通路幅があれば、周囲にぶつかる心配なく椅子を動かして、自然な動作で着席および離席できるためです。
座席とデスクまたは壁間の通路
1人が座席の後ろを通行できるように配慮する場合、通路幅は120cm程度が推奨されます。車椅子利用者の通行や2人が行き交うことを想定する場合は、160cm以上の通路幅を確保するとよいでしょう。
座席間の通路
背中合わせで作業する従業員同士の間については、160cm程度の通路幅が必要です。160cmほどの余裕があれば、両座席に従業員がいる場合でも1人が間を通行できます。車椅子利用者の通行などを想定する場合は、より広い間隔を確保するとよいでしょう。
デスク間の通路
1人でデスク間を通行すると想定した場合、通路幅は90cm程度が適切です。ただし、車椅子利用者の通行や2人が行き交うことを想定する際は、余裕を持たせるべく160cm以上の通路幅が推奨されます。
座席と収納間の通路
キャビネットやロッカーなどの収納家具がある場所では、扉の開閉に対応するため、150cm以上の通路幅を設定しましょう。十分な通路幅を確保すると、背後を人が通行している際も収納物の出し入れがスムーズです。
コピー機・複合機前の通路
コピー機・複合機前の通路には、100~150cm程度の幅が必要です。特に、複合機の前に座席がある場合は、作業スペースの確保のため140cm以上の余裕ある通路幅が推奨されます。

オフィスの通路幅を適正に保つメリット

オフィスの通路幅を適切に設計すると、業務効率の向上や安全性の確保などのメリットが得られます。以下で詳細を解説します。
働きやすいオフィス空間のため
オフィスレイアウトにおいて、通路幅は労働環境の快適さを大きく左右します。適正な通路幅を確保すると、スムーズな動線が生まれ、従業員の移動時のストレスや時間のロスを抑えられるためです。また、適度な距離感を保った状態で従業員が働けると、自然なコミュニケーションが促進され、チームワークの向上にもつながります。
安全性のため
災害発生時の避難経路では、適切な通路幅の確保が重要です。地震や火災などの緊急時には、多くの従業員が一斉に移動する可能性があり、狭い通路では安全かつ迅速な避難が困難になります。また、安全性を維持するため、段ボールや備品などを通路に置かない、整理整頓を習慣化するなどのルールを設けて徹底しましょう。
オフィスの通路幅に関する3つの法的要件
オフィスの通路幅に関して、建築基準法、消防法、労働安全衛生規則の観点から解説します。
1. 建築基準法における規定
建築物に関する基準が定められた建築基準法では、以下の条件に該当するオフィスの通路幅に関して規定が定められています。
「病院における患者用のもの、共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が百平方メートルを超える階における共用のもの又は三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が二百平方メートル(地階にあつては、百平方メートル)を超える階におけるもの」
上記条件に該当する場合、両側に居室がある通路の場合は1.6m以上、その他の通路については1.2m以上の幅を確保する必要があります。
2. 消防法の要件
消防法は、火災に備えるための法令です。オフィス空間における通路幅について、消防法では具体的な基準を設けていません。
ただし、非常時の円滑な避難を確保するため、消防法では、通路上の物の放置や障害物の放置を制限しています。日常的に通路の安全性を保てるよう、従業員への意識づけと設計段階での配慮が求められます。
3. 労働安全衛生規則の基準
労働安全衛生規則は、職場における労働者の安全と健康を守るための基準を定めています。オフィスの通路幅に関して明確な基準はありませんが、作業環境における安全確保の観点から、以下のようないくつかの重要な要件が設けられています。
- 通路面から1.8m以内の空間に障害物を設置してはならない
- 通行の妨げにならないよう適当な照明を設置する
- 通路を、つまずき、すべり、踏抜などの危険のない状態にする
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オフィスレイアウトの通路幅に関する注意点

オフィスの通路幅を検討する際は、法的要件の遵守とプライバシーの両面からの配慮が必要です。
法的要件を遵守する
オフィス空間の設計において、法的要件を遵守することは最も重要です。通路幅に関する規定に加え、照明設備や避難経路の確保など、安全性に関わる基準を理解し、適切に設計しましょう。
プライバシーに配慮する
通路幅の確保を優先するあまり、デスクサイズを過度に縮小することはやめておきましょう。従業員1人ひとりの作業スペースが狭くなると、隣席との距離感が近くなりすぎて個人の集中力が低下したり、機密情報の取り扱いに支障が出たりする可能性があるためです。
労働環境の問題で個人の生産性が低下すると、組織としての生産性にも影響が出る場合があります。

オフィスの主なレイアウト6選
オフィスの主なレイアウトを紹介します。業務内容や組織の特性に応じて最適な配置を選択しましょう。
1. フリーアドレス型
フリーアドレス型は、固定の席を用意しない柔軟なオフィスレイアウトです。従業員は毎日、業務内容に応じて適切な席を選んで働きます。組織の規模変更や出社人数の変動にも柔軟に対応できるため、フリーアドレス型なら効率的なスペース活用が可能です。
関連記事:オフィスをフリーアドレスにする手順とは?基本から導入事例も
2. 対向型
対向型は、チームメンバー同士でデスクを向かい合わせに配置するレイアウトです。チームメンバー間の対面コミュニケーションが活発になり、情報共有や協力が必要な業務に適しています。
3. 背面型レイアウト
背面型レイアウトは、チームメンバー同士が背中合わせとなるレイアウトです。メンバー間には通路が設けられます。視線が交わらないため個人作業に集中しやすく、必要に応じて声を掛け合える距離感は、背面型レイアウトのメリットといえます。
4. 同向(並列)型
同向型では、オフィス内の全員が同じ方向を向くようにデスクを配置します。隣席との視線が交わりにくく、個人の集中力が求められる業務に同向型は最適です。研修やコールセンター業務などでは、同向型がよく採用されています。
5. クラスター型
クラスター型は、デスクの向きを列ごとに変え、間に収納家具やパーテーションを設置するレイアウトです。仕切りによってプライバシーが確保されるクラスター型は、業務に集中できる環境を提供できます。
6. ベンゼン型
ベンゼン型は、120度の角度を持つデスクを3つ組み合わせたY字型のレイアウトです。ベンゼン型は、各従業員に広いワークスペースを提供できるうえに、仕切りの設置により個人の作業に集中できる環境を提供できます。
オフィスのスペースを有効に使うポイント

最後にオフィスのスペースを有効に使うポイントについて解説します。
通路幅を若干狭める
本記事にて紹介した通路幅は、快適なオフィス環境を実現するための参考値です。実際のレイアウト設計では、スペースの制約や業務の特性に応じて柔軟な調整が可能です。例えば、利用頻度の低い通路であれば、10cm程度の幅の縮小であれば実用上の支障は少ないでしょう。
家具やOA機器関連を工夫する
以下のスペース有効活用策も試してみましょう。
- コンパクトな家具やOA機器を選ぶ
- 引き戸の家具を選ぶ
- パーテーションで壁の占有スペースを節約しつつ、プライバシーを確保する
- 紙の文書を削減し保存スペースそのものを削る
- 文書保管サービスを活用する
- テレワークを推進する
以上のアイデアを試すことで、オフィスのスペースを有効に使える可能性があります。
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まとめ
オフィスの通路幅を適切に確保すると、働きやすく安全性が確保された職場環境を構築できます。オフィス内を通行する人や車椅子の寸法を意識し、法的要件やプライバシーに配慮しつつ、適切な通路幅を確保しましょう。
丹青社は、多様な施設の調査・企画・設計・施工・運営管理など、幅広い範囲で事業展開を行っています。チェーンストア事業では、パイオニアとして活躍中です。文化施設事業においては、専門のシンクタンクを備え、業界でも有数のシェアを誇ります。オフィスのレイアウトを検討中の人は、ぜひ丹青社にご相談ください。
この記事を書いた人

株式会社丹青社
「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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株式会社丹青社