オフィスランドスケープとは?空間づくりのメリットや採用する際の注意点を解説

ワークプレイス |

オフィスランドスケープは、近年注目されるオフィスレイアウト方法の1つです。しかし、レイアウトをイメージできても、採用する具体的なメリットが分からない人もいるかもしれません。

本記事では、オフィスランドスケープを採用するメリットやデメリット、注意点などを解説します。ぜひ、参考にしてください。

オフィスランドスケープとは

オフィスランドスケープについて、レイアウトの特徴と、フリーアドレスとの違いを解説します。

オフィスランドスケープはレイアウト方法の1つ

オフィスレイアウト方法の1つであるオフィスランドスケープは、ドイツのクイック・ボーナーチームによって提唱されました。

オフィスランドスケープのコンセプトは、開放感です。床から天井まで届き空間を分断する壁は、オフィスランドスケープでは使用されません。代わりに、背の低い家具や植物などを使用してゆるやかに空間を区切ることで、見通しがよいオフィスを実現しています。

オフィスランドスケープとフリーアドレスとの違い

フリーアドレスは、従業員1人ひとりの固定席を設けない制度です。オフィスランドスケープは、フリーアドレスを実現するための手段の1つとして注目されています。

オフィスランドスケープがフリーアドレスに適している理由は、オフィス内を動きやすいうえに、見通しがよく必要な場所や人を効率よく見つけられることです。

日々、異なる場所で働くフリーアドレスでは、従業員同士のコミュニケーションに支障が出る場合があります。しかし、オフィスランドスケープを採用すると、フリーアドレスでもコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。

オフィスランドスケープ以外のオフィス向きレイアウト

オフィスランドスケープ以外のオフィス向きレイアウトについて、コリドータイプとクローズドタイプを紹介します。

コリドータイプ

コリドー(廊下)タイプは、廊下を挟んで多くの執務室が並ぶオフィスレイアウトです。1部屋あたりの人数は1~2人です。

従業員のプライバシーやセキュリティに配慮したい職場には、コリドータイプが向いています。また、執務室内の人数が少ないため集中力を維持しやすい点も、コリドータイプのメリットといえます。特に、デザイナーや建築家、ゲーム開発者などのクリエイティブ職に就く人々にとって、コリドータイプのオフィスは業務に没頭しやすい環境となるでしょう。

クローズドタイプ

クローズドタイプは、チームごとに執務室をつくるオフィスレイアウトです。クローズドタイプはコリドータイプと比べると、やや1部屋あたりの人数が多くなります。

コリドータイプと同様にプライバシーやセキュリティに配慮できる一方で、チーム間のコミュニケーションが不足しやすくスペースを無駄にしやすい点が、クローズドタイプの課題といえます。

オフィスランドスケープが注目されるに至った経緯

オフィスランドスケープは、コリドーオフィスの問題点を解消するために、1960年代のドイツで考案されました。

チーム間のコミュニケーションを促進し、空間の効率的な活用を実現するオフィスランドスケープは、1960年代後半から、アメリカやヨーロッパのオフィスで盛んに取り入れられるようになりました。近年は日本でも、オフィスランドスケープを採用する企業が増加しています。

オフィスランドスケープを意識した空間づくりのメリット

コミュニケーション活性化、レイアウト変更の容易さ、コスト削減の観点から、オフィスランドスケープを採用するメリットを解説します。

従業員同士の意見交換が活発化する

オフィスランドスケープを採用すると、従業員同士の意見交換が活発化します。特にフリーアドレスを採用する場合は、前述のようにオフィスランドスケープがおすすめです。

移動可能なパーティションや低い棚などでゆるやかに空間を区切ると、視界が開け、誰がどこで働いているか分かります。用事がある相手を探す手間を省け、従業員同士が気軽にやり取りできるようになるでしょう。

レイアウトを簡単に変更できる

組織変更の際や、コロナ禍のような社会的変化に対応する必要があるとき、オフィスランドスケープでは比較的容易にレイアウトを変更できます。レイアウト変更が容易な理由は、固定された壁の代わりに、可動式のパーティションや棚などを間仕切りに利用しているためです。

コストをかけずにレイアウトを完成させられる

これからオフィスのレイアウトを検討する場合、壁や間仕切りを導入しないオフィスランドスケープなら、建設コストや材料費を大幅に節約できます。

ただし、コリドーオフィスのように、壁が多いレイアウトからオフィスランドスケープに移行する際は、壁の撤去費用が発生します。さらに、レイアウト変更中の一時的な移転費用なども考慮する必要があります。レイアウト変更で将来的に得られるメリットを考慮し、初期投資が妥当かどうかを慎重に検討しましょう。

オフィスランドスケープを意識した空間づくりのデメリット

オフィスランドスケープのデメリットを解説します。業務への影響を抑えるために、以下のデメリットを把握しておきましょう。

プライバシーやセキュリティ対策に問題がある

オープンなオフィスとなるオフィスランドスケープは、プライバシーの確保やセキュリティ対策が重要な課題となります。例えば、オフィスでWeb会議をしているときに、周囲の話し声が画面の向こうまで届いてしまうと、情報漏洩につながる可能性があります。

業務に没頭できない場合がある

オープンな環境では集中しにくいと感じる従業員も少なくありません。集中力低下の主な理由は、固定された壁や間仕切りの少なさです。壁や間仕切りがなければ、周囲の会話や作業音が耳に入りやすくなります。さらに、静寂が保たれている場合でも、視界に他の従業員の動きが入り気が散ってしまう場合もあります。

オフィスランドスケープを円滑に進めるコツ

オフィスランドスケープを円滑に進めるコツを解説します。多様な業務や従業員の価値観に配慮できるように、レイアウトを工夫しましょう。

プライバシーやセキュリティに配慮する

プライバシーやセキュリティに配慮するために、オフィス全体をオープンな空間にはせず、壁で完全に仕切られた個室やミーティングスペースを設けましょう。視覚的な遮蔽に加え高い遮音性を確保すると、上司との面談のようなプライバシーが求められる状況や、機密性の高い業務に対応しやすくなります。

業務に没頭したい人に配慮する

個室や私語禁止のスペースを設置して、業務に没頭したい人に配慮できるオフィスレイアウトを検討しましょう。

オフィスの各エリアに「Web会議専用スペース」「フリーディスカッションエリア」など明確なルールを定めておくと、従業員は業務内容や個人の好みに合わせて、最適な作業エリアを選択しやすくなります。

オフィスランドスケープを採用する際の注意点

オフィスランドスケープに適したオフィスの広さは、数百平米です。スペースに十分な余裕があると、開放感と効率的な動線を確保できます。

ただし、天井までのパーティションを使用する際は注意が必要です。消防法の規定により、スプリンクラーや火災報知器の設置が求められる場合があるため、事前に規定を確認しておきましょう。

オフィスランドスケープの成功事例

ここからは、具体的にオフィスランドスケープを導入した企業についてご紹介します。オフィスランドスケープの成功事例や、各企業の工夫を参考に、自社のオフィスレイアウトを検討してみましょう。

富山銀行新本店

富山銀行の新本店では、オフィスランドスケープを採用し、フリーアドレス制に適した環境を構築しました。オフィス内にフィットネススペースを設け、健康経営への取り組みを明確に示しています。さらに、デジタル化の浸透に向けペーパーレス化を目指す同社は、机の引き出しを廃止するなど、新しい働き方に適したレイアウトの実現に取り組んでいます。

富山銀行新本店 | 実績紹介 | 株式会社丹青社

MonotaRO 本社

MonotaROの本社では、オフィスランドスケープを全体的に採用しており、カフェエリア、執務エリア、ラウンジエリアなどの機能別スペースがゆるやかに区分けされています。

同社は以前、サテライトオフィス制を導入していましたが、業務効率の向上を目指し、本社オフィス環境を大幅に刷新しました。

MonotaRO 本社 | 実績紹介 | 株式会社丹青社

USEN-NEXT GROUP オフィス

USEN-NEXT GROUPのオフィスでは、ABW(Activity Based Working )の推進を目的として、オフィスランドスケープを採用しました。

オフィス内には、集中して作業できるスペース、ミーティング用のスペースなど、多様な機能を持つワークスペースが設置されています。従業員が用途に合わせてワークスペースを選択できるため、従来を上回る生産性向上につながりました。

USEN-NEXT GROUP オフィス | 実績紹介 | 株式会社丹青社

まとめ

オフィスランドスケープを採用すると、開放的でコミュニケーションを取りやすい空間を構築できます。オフィスランドスケープを円滑に進めるためには、多様な働き方や従業員の価値観に配慮した空間づくりを心がけましょう。

丹青社は、多様な施設の調査・企画・設計・施工・運営管理など、幅広い範囲で事業展開を行っています。チェーンストア事業ではパイオニアとして活躍し、文化施設事業においては、専門のシンクタンクを備え業界でも有数のシェアを誇ります。


この記事を書いた人

株式会社丹青社

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うさまざまな社会交流空間づくりの課題解決をおこなっています。

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